1.スピード線を引いてみよう 2.スピード線を引いてみよう(実践編)
3.集中線を引いてみよう
4.キャラデザイン(主人公特権) 5.キャラデザイン(ベタとトーン) 6.キャラデザイン(描き分け)



1.スピード線を引いてみよう

 
■ 『G戦』に魅せられて
 日本橋ヨヲコ『G戦場ヘブンズドア』の普及活動は順調に進んでおります。
 先日の地元飲みで貸していた1〜3巻を返してもらい、すぐさま次の友達に貸して、別の友達には年末にAmazonで買っといた分をプレゼントしておきました。これで地元の友達4人、大学の友達1人、兄貴1人への普及が完了しました。漫画の話をする友達なんてそんなにいないので、あと数人が限度っぽいですが・・・・・・・・
 反応の内訳はというと。貸した(あげた)ばっかの二人は省略するとして、4人中3人は大絶賛、残りの1人は「なんとも思わない」とのことでした。ここで「どうして何も思わなかったのか」なんてことを言語化出来るのはかなり深いヲタクだけなので、理由なんかは聞きませんでしたけど―――まぁ、偏差値だということにしておけば人それぞれですからね。


 サイトの方でオススメして手に取ってくれた方は数知れず。色んな方が、「良かったですよー」と言って下さるのが嬉しいです。サイトやって良かったなぁと思う瞬間ですね。
 ・・・・・でもまぁ、名指しで「読め―――!」とオススメして「じゃ・・・じゃあ、読みます」と言って読んで下さった方は一人しかいないんで、「面白かったですよー!」と届く意見だけを全てだと思っちゃいけないんですけどね。
 そもそも、誰もが絶賛しすぎていると、
「あれ・・・・・・やばい。俺も読んだけど、ちっとも面白くなかった。俺って感覚おかしいのかな」と思っちゃう人も出てきそうですし。それは避けないと・・・・・・・・・・


 人に何かを薦める時は、そうした「肌に合わないかも」というリスクを考えなきゃならないと思ってます。時間・お金・労力・・・・・・・漫画を読むのにだってそうしたものを費やす訳ですから、無条件に「○○は絶対に面白いです」と薦めてくる人には「じゃあ、つまんなかったら金返してくれる?」と言いたくなってしまいます。いや、別に特定の誰かのことを指している訳では決してなくて。世間一般として、「自分の価値観は絶対的に正しい」と思っている人が余りにも多いって話です。




 それはそうと、『G戦』2巻で町蔵がやらされている線引きのシーン―――町蔵はその作業に愚痴るんですけど、イノさんに
「全ての絵は線からできてるのよ。」と言われるところは結構深いなぁと思います。僕らは漫画を読む際に派手な部分ばかり見てしまうんですが、一本一本の線に職人の魂がこもっているんだなぁと思い直した場面です。

 なので、僕もやってみました。



 

 うわぁ、酷ぇ(笑)
 本当、町蔵のことを笑えないです。ヌキがどうのこうの以前の問題ですね。途中で擦れている箇所が幾つもありますもの。こういうのをさり気なくこなしてくれるアシスタントが存在するから、漫画というものは完成するんですよね。ちょっと感動。


 ということで、このスピード線の効果を表すために↓の海ちゃんの絵を使ってみようと思います。着色どころかベタも塗っていない状態ですが・・・・・


 





 これに、スピード線を加えると・・・・・・・・・・・・↓





 

 うぉっ、別次元ですね。
 僕のへっぽこな絵にへっぽこなスピード線を加えただけなのに、ここから起こりうる“何か”を想像することだって出来そうです。場面にも依りますが、相当な事実を知らされてビックリしたか、今から相手の必殺技を喰らうところのどちらかでしょうか。後者だったら海ちゃん萌えの人から激しい反感をくらいそうですが(笑)



 こうやって、1コマにおける演出・効果を見つめ直していこうという新コーナー
「オチのない1コマ漫画」スタートです。“オチがない”からと言って、シュールギャグ漫画だと思っていた方残念です。僕にそんなもの描ける訳ないじゃないですか!

 次回は、この“スピード線”の実践編です。
 こういうのって「漫画を描く側の視点」のコーナーだと思われがちですが、上のへっぽこなスピード線を見れば分かるように、あくまで「漫画を読む側の視点」のコーナーだと御理解下さい。“あぁ・・・・このコマって、こんなに情報が詰まっているんだ”と見つめ直す為の企画です。

 ま、まぁ・・・・・・・・本当はあと3〜4コの目的があるんですけど、それはまだナイショで。『漫結』と僕自身が一歩前に進むために、絶対にやっておかなければならない企画なので、誰に何を言われようとも辞めません。仮にリアルみらいちゃんに
「そのコーナーを辞めたら結婚してあげる!」と言われても辞め・・・・・辞めません・・・・・多分・・・・・・うん、多分・・・・・・・・・うぇーん(涙)







2.スピード線を引いてみよう(実践編)

 2ヶ月の間が空きました。 皆さんに忘れられようと、この企画を終えるまでは『漫結』を辞めることが出来ないので頑張る訳です。
 今日はスピード線の話の続きですね。皆さんの中には「スピード線はアクションシーンだけに使うもの」と思っている人がいるかも知れませんが、そんなことはありません。スピード線及び集中線はキャラの心情描写にも多用される超基本的な技術です。スピード線が満足に引けないと集中線も引けないので、『G戦』でまず最初にスピード線を引いていたのは「なるほどなぁ」と思う訳です。


 

 今日はこの画像を使います。この企画の主旨は「1コマの絵と効果だけで何処まで表現できるか」なので、敢えてセリフは消してあります。これだけで状況が分かる人がいたら凄いですよ。まぁ、そもそも漫画の1コマだけを観てどんなシーンかを推測すること自体が無意味ではありますけどね。


 では、これにスピード線を加えてみましょう。

 

 なんだか、思ったほど効果がないような気もしますね・・・・・・(汗)
 でも、どうでしょう。「怒鳴られてる感」は下の方が強く出ているんじゃないでしょうかね。これだけ強く怒鳴られていながら汗一つたらさないイズは、きっと「あー、またかよ。うるさいなぁ」なんて思っているんじゃないか―――と推察できる訳です。漫画とはこういう“お決まりの表現”を読者が“お決まりの解釈”をすることで成り立っているんですね。



 もちろん、スピード線の使い方はこれだけが全てではないです。

 

 ちょっとデフォルメ色が強い画像でアレなんですが、縦方向のスピード線で上下運動を表現してみました。今思うと、こんなに細かく入れる必要はなかったような・・・・・・もっと素早い動きを描く時は、キャラの主線自体をスピード線(?)にするんですかね。この辺ちょっと微妙。



 まぁ、初回なんでこんなもので。次回はもっともっと使用頻度の高い“集中線”をやってみようと思います。







3.集中線を引いてみよう

 島本和彦の名作『燃えろペン』の第1話に、炎尾燃がアシスタントに集中線の引き方を教えるために彼女の宝物を破壊して「それだよ!今キミの後ろに出た集中線だあっ!そいつが一番大事な物を失った物の背負う集中線だ!その集中線がほしい!!」というシーンがあります。
 集中線は動きだけでなく、登場人物の心理的な圧迫や驚きなどを表現し、現代漫画には欠かせない最重要要素となっています。ためしに今週号のジャンプ(13号)の漫画を見てみると・・・・・・・


 『NARUTO』:13コマ
 『ネウロ』:9コマ
 『ブリーチ』:14コマ
 『アイシールド21』:18コマ
 『デスノート』:1コマ
 『HUNTER×HUNTER』:15コマ
 『いちご100%』:15コマ
 『武装錬金』:7コマ
 『ジャガー』:8コマ

 ベタフラやトーンでの集中線はカウント対象外にしました。バトル漫画の『H×H』や『NARUTO』と『いちご100%』が同格の回数ということからも、集中線が色んな効果をもたらすということが分かってもらえると思います。

 集中線自体は、スピード線がキレイに引ける人なら難なく引けるんじゃないですかね。僕はスピード線も汚いので、集中線も汚くなっちゃいます。(スキャンの具合も悪いし・・・・と言い訳しておきます)


 

 ほら、全然印象が違うでしょ? 海ちゃんの提案がイキイキとしているような気さえします。




 それでは―――ここから更に1ランク上の効果を目指すため、上述の『燃えろペン』第1話に登場した集中線を再現してみようと思います。


 

 さっきよりも濃い目の集中線を引いた後、ホワイトでちゃっちゃと白部分を足しただけで怒り具合が何倍にも膨れ上がったような気がします。ちょっとぐらい絵が拙い作家さんでも、こうしたスピード線・集中線を使いこなせればそれなりの漫画になるってことです。逆に言うならば、集中線なしで漫画を描くのは非常に難しいってことですね。



 それはそうと、集中線が引けるようになったらベタフラッシュもお手の物です。

 

 まぁ、ベタにムラがあるのはツッコまないで下さい(笑)
 実際問題、このベタフラッシュは中心点に向かってないのでダメダメなんですけどね・・・・・それでも、何もない状態よりは、ベタフラを足したことで情報量は何倍にもなると思います。この企画は描く側の視点ではなく、読む側の視点で語る企画なので―――「あ、このベタフラや集中線のおかげで効果的に読めてるのかー」くらいで良いと思います。



 スピード線、集中線、ベタフラと続いたので―――普通なら次は点描あたりをやるんでしょうが、さすがにテクニック的な話は皆さん飽きていると思うので・・・・・・次回からはデザイン的な話に触れたいと思います。まず初回は“主人公特権”から。







4.キャラデザイン(主人公特権)

 効果の話はひとまず置いておいて、今日からはキャラデザインの話をします。
 マンガ論みたいな話になるので、「オチのない1コマ漫画」というコーナー名のくせに今日は画像がありません(笑)


 さて・・・・・ジャンプの新人募集のページなどで、必ずといっていいほどに主張されるのが「主人公は目立たせろ」ということです。キャラ漫画として『幽遊白書』をヒットさせてから更にこの傾向は強くなったと思いますが、ジャンプでの主人公は他脇役とのデザインを一線引く傾向が強いです。もちろん、ジャンプ以外の作品でも「主人公を目立たせる」ことは重要視されています。

<髪の色が一人だけ違う>
 ・桜木花道『SLAM DUNK』 トーン(赤髪)
 ・緋村剣心『るろうに剣心』 ベタなし(赤髪)
 ・黒崎一護『BLEACH』 ベタなし(オレンジ?)

 代表的なのはこの3人ですかねー。この3人に共通されることは、デザインの特権が作中の設定とリンクしてくるということです。「あの赤髪の男!」とか、「赤髪に十字傷の男!まさか!」のように作中で呼ばれることが多いということです。
 もちろん、作中の設定とはリンクしない例もあります・・・・・

 ・夜神月『DEATH NOTE』 トーン(茶髪)
 ・アレン『D.Gray-man』 ベタなし(白?銀?)
 ・ジャガー『ピューと吹く!ジャガー』 トーン(赤?)

 ここで重要なのは、設定としての色ではなく「ベタ」「ベタなし」「トーン」などの使い分けです。アニメ作品などでは無数の色を表現できるのでピンクやらオレンジなどの髪の色で識別させたりしますが、漫画では大体がこの3種類の組み合わせしかありません(詳しくは後日書きますけど、トーンをキャラデザインに組み込むのを嫌う作家さんもいますし)

 喩えば、『BLEACH』の一護は初期(主要)メンバーの中では唯一のベタなしキャラです。ルキア、たつき、石田、チャドは黒髪、織姫はトーン髪(遊子はベタなしだけど、主要メンバーというとアレですしね・・・) ただ、路線変更後に尸魂界編が始まると急変。先週出てきたキャラを見ると、日番谷、イヅル、乱菊、市丸―――とベタなしキャラばっか(笑) 久保先生の苦悩が伝わってきます。



<髪型が特徴的>
 ・孫悟空『DRAGON BALL』 ツンツン
 ・アルシオ『Waqwaq』 トサカ?
 ・ゴン『HUNTER×HUNTER』 トゲトゲ
 ・小早川瀬那『アイシールド21』 アトム?
 ・坂田銀時『銀魂』 天然パーマ


 上で述べたとおり、白黒の漫画では色のバリエーションには限度が出てきます。スポーツ漫画なんかは登場人物が特に多いので、一人だけ髪の色が違うなんてことは難しいですものね。そこで特徴的な髪型で読者に印象付けるという方法が取られます。
 少年漫画の主人公に黒髪ボサボサ頭が多いのは、主要メンバーの中で一人だけボサボサ頭だと識別しやすいからです(ただ、あまりにもそんな主人公が多すぎて、どの漫画の主人公か識別しにくいという皮肉な結果にもなりますけど・笑)

 また、『未確認少年ゲドー』の岡野先生が仰ってましたが、主要メンバーは特徴付けて“子供達が似顔絵を描きやすい”ように配慮しているとのことです。岡野先生の意図とは違うでしょうが、キャラ人気を煽るためには必要なことですよね。
 ただ、“子供達が描きやすいように”ではなく“自分が描きやすいように”デザインする『HUNTER×HUNTER』みたいな例もあるんですが・・・・・(笑)

 
※ 3月13日追記:『Waqwaq』の主人公をアルと書いてました。ご指摘ありがとうございます。こんなの言われなければ絶対気付かなかったです。来週から『Waqwaq』感想になるというのに、僕はしょっちゅうアルとシオの名前を間違えるんですよね。僕の中でアル=少年の名、シオ=少女の名という構図が出来ているみたいで・・・・今までにも間違えていたところがあるんじゃないかとヒヤヒヤしています。



<アイテムが特徴的>
 ・ルフィ『ONE PIECE』 麦わら帽子
 ・ナルト『NARUTO』 上下ベタなしの服
 ・越前リョーマ『テニスの王子様』 キャップ

 『ワンピース』の場合、各キャラの特徴が通り名になるって設定がステキですよね。麦わら=ルフィとか、赤髪=シャンクス、長鼻=ウソップとか。
 同じコトでも学園モノとかじゃやりにくいですよね。「出た!麦わらの生徒会長だ!!」とか、アンタそれ校則違反だろってなっちゃいますもの(笑) アレだけ各キャラを奇抜なデザインにしているのだから、『ミスフル』とかもデザインと設定をもっと絡めてくればいいのにって思います・・・・・・・



 それでは、髪型も奇抜にしにくい、アイテムも持たせにくい学園モノの場合はどうするのかというと―――
 ・武藤カズキ『武装錬金』 制服の前を空けている
 ・ツナ『REBORN!』 男子学生の中で唯一髪の色が違う(京子ちゃんやディーノは同じ色)
 ・花中島マサル『マサルさん』 髪型が凄く変で、肩に変なの載ってる(笑)
 ・風祭将『ホイッスル!』 凄くチビ
 ・真中淳平『いちご100%』 特徴がないのが特徴

 うーん・・・・・・どれも苦し紛れのような気がしますね。一人だけ赤髪という奇抜なデザインを設定に繋げた『SLAM DUNK』の凄まじさが分かります。
 もう一つ―――かなり反則的な技ですが、斗貴子さんのように「一人だけ制服が違う」という転校生という設定を活かす方法もあります。マイナーな漫画ですが、相川有『DARK EDGE』なんかはこの手法を使っていますね。一人だけ学ランなので主人公を間違えるということは、まずありません。

※ 3月14日追記:『ホイッスル!』の主人公を風祭翔→将に修正しました。コミックス全巻持ってるのに、本気で翔だと思っていました。でも、これだと翼と名前が被っちゃいますもんね。




 あと、考えられるのは「デカい」「いつも同じ服」「メガネ」「主人公だけ異常に美形」とかでしょうか・・・・ジャンプ以外の漫画でも、アナタの持っている漫画の主人公の特徴を考えるのも楽しいかも知れませんね。


 ただ、これはやはりジャンプに特化した現象だとも言えます。ジャンプはキャラ人気を煽ることが生存に繋がりますが、「ドラマ性」を求める場合はキャラ人気が全てとはなりませんからね。「何処にでもいる人が主人公」を描きたい場合は、敢えて没個性にすることもあります。青年漫画の場合はこっちの方が多いかも? 僕の本棚にある青年漫画を分類すると・・・・


 没個性:『イエスタデイをうたって』『ブラックジャックによろしく』『CUE』『金魚屋古書店』
 個性:『リアル』『ONE OUTS』『20世紀少年』

 どうやら、少年漫画よりの作家さんは主人公のデザインも個性を出そうとしているのかも?(浦沢直樹はデビュー前サンデーに持ち込んでいたらしいし・・・) まぁ、多分に作品の方向性の問題でしょうけど・・・・



 次回は、キャラデザインの話の2回目。ベタとトーンについて語ります。







5.キャラデザイン(ベタとトーン)

 気付けば2週間も空いてしまいましたね・・・・・・語るべきネタはかなり溜まっているというのに。
 今日はキャラデザインの2回目。トーンとベタについてです。トーンについての知識は付け焼刃なので、結構怪しいトコはあると思いますが、本題はキャラデザインのとこなので―――大目に見て下さい(汗)

 このサイトを読んでいる人にスクリーントーンという言葉を知らない人がいるとは思いませんが、一応説明をすると、スクリーントーンとは漫画内に使われる点や線の規則的な模様のことです。市販のモノを買って貼り付けるのが一般的でしょうが、パソコンでCGとして自作している漫画家さんもいるらしいです。白と黒しか表現できない漫画の世界に、その中間の色をもたらした画期的な画材であると言えます。
 ジャンプ読者にトーンの凄さを説明するんだったら、やっぱり藤崎竜の作品を見てもらうしかない!って感じですかね。彼の作品は「白黒なのに色が見えるようだ」と言われるくらい、トーンが美しく使われています。

 が、逆にトーンを嫌う漫画家さんも少なくないんですよね。有名なところでは鳥山明先生。現役のジャンプ作家で言えば、岸本斉史『NARUTO』とかもそうですね。この二人とは意味合いが違いますが、吉田基已の『恋風』なんかは細かい線で陰影を表現するのでトーンは一切使われていませんでした。
 トーンを使いたがらない理由は人それぞれでしょうが、画面が冷たくなってしまう、平べったくなってしまう、お金がかかる、印刷でちゃんと出るか不安・・・・・・・などかなぁ。確かにトーンをほとんど使わなかった鳥山明の作品は、画面から暖かみを感じたもんです。一方のトーンを多用する漫画は、無機質ながらもキレイでビジュアルに特化した漫画だという印象を受けました。

 もちろん、どちらが偉いという訳ではないです。漫画家さんによって、認識が違うんだ・・・・くらいの気持ちで受け取ってください。僕は細かいトーンを駆使できる漫画家さんも、トーンなしで画面を映えさせる漫画家さんも同等に凄いと思います。



 では、ここからが本題。キャラデザインの話です。
 これも漫画家さんによって様々ですが、メインキャラのデザインにトーンを使わない作家さんもいます。コミックスが手元にないので記憶頼みになりますが―――確か、『るろうに剣心』の主要キャラ4人(剣心・薫・弥彦・左之助)にはトーンが使われていなかったんじゃないですかね。その後のキャラ(恵・操・斎藤ら)には、仕方なくなのか使われていましたけど。
 同様に和月先生の『武装錬金』の主要キャラを見ると―――カズキ、斗貴子さん、パピヨン、ブラボーらにはトーンが使われていません。序盤から登場するキャラの中ではただ一人まひろだけがトーン髪ですが、これは初期構想では2巻の時点でカズキは旅立ち、まひろ等の出番はそこで終わるという予定だったからだと思います。

 『SLAM DUNK』にて赤髪=トーン髪という認識が強くなっていた僕ら世代には、剣心の髪がトーンを使わないのに赤髪だというのに違和感を覚えていたんですが、こういう理由があったんですよね。


 和月作品以外にトーンをキャラデザインに使わない漫画はないのかと聞かれると、実は困ったり・・・・(笑)
 『HUNTER×HUNTER』、『NARUTO』・・・・・・・あと、“主人公以外は使わない”ということで『ジャガー』とか。これは次回に語りますけど、キャラデザインで一番重要なのは「見分けがつくこと」なので、ほとんどの漫画家さんがキャラデザイン(特に髪の毛)にトーンを使用しているってのが一般的でしょうね。



 それじゃ、ベタはどうなんでしょうか?
 ベタの場合は反対に「なるべくキャラデザインに組み込みたい」と考えるのが普通です。ベタが一箇所もないコマは白くて落ち着かなくなってしまうので、顔アップやバストアップの構図の時にベタが入るよう―――多くのキャラは、髪の毛か上半身の服にベタがあるとみていいと思います。

 喩えば、『DEATH NOTE』のLは上下の服が白(ベタなし)なので髪がベタ。ミサは髪が金(ベタなし)なので服がベタ―――といった感じに。日本人がメインキャラの漫画の場合ほとんどのキャラが黒髪なので助かりますが、金髪のキャラがいると一苦労です。キルアもクラピカも一護もボーボボもサクラも銀ちゃんもアレンも服にベタが入ります。そりゃ、ベタが入る/入らないの2つしかないんだから、半分のキャラはベタが入って当然なんですけどね(笑)


 逆に、バストアップの状態で1箇所もベタが入らないキャラを考えると―――夜神月、瀬尾雄斗、うずまきナルト・・・と主人公クラスが敢えてそうしている(主人公としてデザインを目立たせるため)ケースが多いです。とは言いつつも、ナルトの場合は主人公の出番が増えると画面が白くなってしまうので、第2部スタートでユニフォームチェンジしましたが。





 う〜ん。今回の話は結構論理的にムチャクチャで強引に話を進めているフシがありましたねぇ。というのも、本当に語りたかったのは次回のテーマだったので、その前フリとして今回の話があったからです。次回こそがキャラデザイン話でのラスト“メインキャラ描き分け”です。次こそはグズグズにならないように頑張ります・・・・・・・多分。




 余談:以上のことを踏まえつつ、当サイトのキャラ:悠真の制服の設定を考えたいと思います。コピーを5枚とって、それぞれにトーンとベタを施して、どれが一番しっくりくるかを考えてみましょう。



 1.ネクタイ(ベタ)+ブレザー(トーン)+ズボン(白)
 

 ベタ部分はネクタイのみ。


 2.ネクタイ(ベタ)+ブレザー(トーン)+ズボン(トーン)
 

 同一のトーンです。一緒に見えないのは、一回コピーかけたからです。
 同一のトーンの組み合わせは『DARK EDGE』とかがそうですね。試さなかったけど、ブレザーの方を濃い目のトーンのする『最終兵器彼女』みたいなパターンもありましたね。どちらにしろ、トーンの箇所が多くなるとお金がかかります(笑)


 3.ネクタイ(ベタ)+ブレザー(トーン)+ズボン(ベタ)
 

 スキャンすると、ベタのムラ具合がハッキリと出てヘコみますね・・・・・・・
 実はブレザータイプの漫画では、これが最大手かも。『アイシ』とか『リボーン』とか。


 4.ネクタイ(ベタ)+ブレザー(白)+ズボン(トーン)
 

 トーンの種類は線ではなくて点ですけど、『デスノ』序盤に出てきた制服はこのパターンです。漫画ではあんまり見かけないかもですね。ベージュ(っていうのか?)のブレザーの学校って、お金持ちっぽいイメージです。


 5.ネクタイ(トーン)+ブレザー(ベタ)+ズボン(トーン)
 

 男モノのブレザーが黒って制服、漫画だと何がありますかね・・・・・・男性キャラで黒系の上着が必要な場合、大抵は学ランになるので例が少ない気がします。女のコの黒ブレザーは頻繁に見かけるけど・・・・・・




 うーん・・・・・皆さんはどれが一番しっくり来ましたかね?
 僕的には“バストアップの絵に一箇所ベタを入れる”の法則で5を最初に思いついたんですが、実はバストアップの絵ならネクタイがベタでも印象はさほど変わらないんですよ。


   

 むしろ、この絵だとネクタイが黒い方がしっくり来る気がしますしねぇ・・・・・・・・難しい(で、結局は決まっていない)







6.キャラデザイン(描き分け)

 いきなりどマイナーな漫画の話から始めて申し訳ないのですが、相川有『DARK EDGE』という漫画は主人公格のキャラが7人もいて、それぞれが別々の目的をもって行動するというクセモノ漫画です。7人も主人公格がいると、以前述べたような「主人公特権」は使えなくなります。それでは、どうするのかというと―――


<男>
高木九郎 伊勢鉄三 吉国紘一 西脇類
トーン
トーン
制服 トーン トーン トーン


<女>
遠山麻央 赤坂未紀 清水朗実
トーン
制服


 とまぁ・・・・・こんな風に、髪の色や服の色、肌の色などを分けることで描き分ける訳です。
 相川先生は自分で「てゆうか相川の描く顔ってぜんぶ一緒で分かんねー」などとネタにしてるくらいで、表情だけで描き分けることの難しさを痛感しているんでしょう。そもそも漫画のキャラは表情がデフォルメされることが多いので、相川先生に限らず目や輪郭だけで描き分けることは不可能だったりするんです。なので―――ほとんどの場合、髪の色と髪型、メガネなどのパーツを組み合わせることで「別人に見えるように」工夫してるんですね。


 『DARK EDGE』のように7人全員がって例は稀ですけど、メインキャラが被らないようにされている漫画は少なくないです。喩えば・・・・・・

<DEATH NOTE>
夜神月 弥海砂
トーン

<いちご100%>
東城綾 西野つかさ 北大路さつき
トーン

<REBORN!>
ツナ 獄寺 山本
トーン



 ぶっちゃけて、登場人物が3人しか出てこない短編を描くなら、髪の色を3種類に分ければ絶対にゴッチャになることはありません・・・・・・が、上で述べたようにトーンをキャラデザインに組み込むのを嫌う作家さんも少なくないので、そうなると髪型やインナーとの組み合わせが重要になってきます。


<HUNTER×HUNTER>
ゴン キルア クラピカ レオリオ
上着
インナー -

 これに加え“バストアップ時にベタの箇所が入るようにしたい”の法則まで考えなきゃいけないとなると、本当に大変ですよね。キャラデザインは、特にジャンプ系の場合は売れるかどうかを分ける重要な要素となるので、念入りに考えなければなりません。逆に言うと―――“重要なキャラかどうか”を見分けるのは、デザインを見ればある程度は分かっちゃうとも言えるかも。




 さて―――ここまで髪の色・服の色を重点的に扱ってきたんですが、もちろん髪の長さとか直毛かパーマかみたいなものも描き分けのポイントになりますね。髪の色(3種類)×髪質(2種類)×髪の長さ(3種類くらい?)を考えるだけで18通りのパターンがあり、これにオプション(三つ編みとか髪留めとか)を加えると無限大のバリエーションになります。

 ですが、コレも漫画によって様々ですよね。伝統ある厳格な柔道部の主将が金髪ロン毛で三つ編みだったら、違和感が出てきちゃいますもの。設定によっては、「男子は全員坊主!女子は全員オカッパ!」のような漫画もありえる訳で―――その時点で、描き分けのハードルは上がってしまうのです。
 『モンキーターン』の青島さんが一人だけ日焼けしていた理由は、まさにコレなんでしょう。髪型で特徴を持たせることが出来なかった研修所時代で、パッと見で目立たせることができる手段がコレしかなかったからなんじゃないかなぁ。




 という訳で、キャラデザイン論はここまで。皆さんのお手元にある漫画に当てはめてみるのも、意外な発見があるかもですねー。キャラデザインのことなんて、フツーに漫画を読む分には気にしなくていいことですが・・・視野を広げてみるのも面白いかもよって話でした。





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