芳崎せいむ
小学館・IKKIコミックス
2004年12月24日・発売
人間ドラマ・古漫画・商店
※ 少年画報社より2003年6月26日に
発売された本の新装版です。
そちらの情報はこちら。
大人の事情というものがあるのですよ。 |
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下巻もフルパワー全開です。やっぱり最終話のそれが印象深いです。
“漫画好き”という属性はどんな分野でも否定的に描かれることが多いんですけど、この漫画においては暖かく描かれ、作者さんは本当に“漫画好き”を好きでいてくれてるんだなぁって思います。「漫画を好きな人はみんな幸せになって欲しい」 こんなメッセージを残せる人はそうはいませんもの。
<序>
キンコちゃんが案内する金魚屋古書店。
菜月さんが大股開きで居眠りしてます。
<第8話:青い空、白いボール>
恐らく、ウチを読んでいる人にもかろうじて分かるのはこの作品くらいだと・・・・・
あだち充の傑作『タッチ』にまつわる名エピソードです。
「わがままだけど、一日一冊ずつ貸してね。だって、なんか一度に全部読んじゃうのはもったいないもん」
好きな女のコに漫画を貸す話。1日1冊漫画を貸していけば、毎朝話せるという喜び。そして、一緒に笑い、一緒に泣けるという悦び。長谷川君の気持ちが凄く分かります。僕も高校時代は持ってる漫画のほとんどを貸してました。まぁ、あんまし報われることはなかったけど・・・・・・・
カッちゃんのシーンで泣き腫らしていた芦野さんが凄く良い。そして、そんな芦野さんのためにスーパーマンになろうと、足りなかった最終巻を探してまわる長谷川君も凄く良い。漫画を通じて、こんなに淡い気持ちを思い出させてくれるとは・・・・・・・
「対須見工決勝戦・・・・10回裏ツーナッシング
ピッチャー上杉・・・・和也があきらめたか・・・? 達也が一度でもあきらめたか?」
こればっかしは『タッチ』読んでこその感動かも。震えまくり。ラストシーンを受けて、扉の1ページ目を読み返すと芦野さんが26巻の「上杉達也は!」のシーンを読んでいるというラスト。長谷川君の気持ちはきっと届いたはず・・・・・・・凄く良い話でした。
<第9話:おかえりなさい>
親の汚職で居場所を失った娘。
親に見捨てられた息子―――行くアテのない二人が出会った一人の子どもとは、という話。『フランス窓便り』、名前も聞いたことがなかったです。そのせいか、ラストシーンの意味が分からなかったり。
でも、ダラダラと店番をしていた菜月さんが元気になるって描写が良かったー。
<第10話:2人の漫画王>
第10話にして、ようやく主人公2人のフルネームが!
鏑木菜月:店長の孫娘
斯波尚顕:年齢、出身、経歴、全て不明
「クセじゃない、生きがいだ!!いったいその人が何を読んでいるのか確かめたいよ!遠くのほうにチラッと見えるページの端だけを頼りに、出来ることなら巻数までをも割り出したい。そして、自分と同じ好みのまんがを読んでいる人には心の中から熱いエールを送りたいんだッッ!!」
斯波さん、全くもって同感です(笑)
しかし、思ってはいたけど誰にも恥ずかしくて言えなかったことを、いとも簡単に言語化してくれる漫画です。斯波さんは心のヒーローです。僕も電車の中で漫画を読んでいる人がいたらチェックします。んで、下らない漫画だったりしたらガッカリします。ジャンプやサンデーの漫画を読んでいる女子高生にはあんまし萌えませんね。村上かつらとか読んでいたら、その場で求婚してしまいそうです。
TVチャンピオンのような番組で、打倒斯波を宣言する男の話。自分の蔵書を守るため、セコい手を使おうとするんだけど・・・・・・皆がただ漫画の趣味を共有するように楽しみあうようになってしまい―――
ラストシーンに冒頭の斯波さんのセリフが伏線としてかかっているのが流石です。なんで彼らはこんなにもイキイキしているのでしょうか。眩しすぎ。
<第11話:漫画の神様>
漫画好きが高じて家族を捨てて出て行ってしまったお父さんと、何故だか病院を抜け出して失踪した金魚屋店長を探す話。物凄く長いけど、物凄く感動した話です。「漫画なんてたかが紙の上だけのこと」という千草ちゃんのセリフが、終盤で色んな意味になって跳ね返ってくるのが見事でした。
『風のゆくえ天のめぐり』―――何故だか解説の載っていない漫画が出てきたなぁと検索してみたら、芳崎先生の作品だとか(笑)
自分で自分の作品を“誰も知らないマイナー漫画”と称するとは。
“千草”と“謙一”という二人の子に名づけられたメッセージ。“千草”は本編で解説されていたので、“ケン一”についてちょっと解説しますね。手塚作品はスターシステムという手法をとっていて、複数の漫画に同じキャラが登場したりしたんです。“ケン一”は初期手塚作品の主人公として描かれた少年。なので、初期作品の多くに登場している訳です。最近観た映画版『メトロポリス』(監督:大友克洋)の主人公もケンイチでした。
手塚記念館も水木記念館も、観光ガイドに載せたいほどに楽しそうな様子を描写してますね。かなり行きたくなりました。謙一が怖がって菜月さんに抱きつくところが良い感じ。
千草ちゃんがお父さんを探して、お父さんが働いていた職場を転々とするんだけど、これが漫画の製造過程と重なって―――漫画では繋ぎとめることが出来なかったパパとママの仲は何だったのという問いに。
そして、手に取ろうとする『リボンの騎士』。
『リボンの騎士』は昔に古本で読んだけど、既に家にはなかった―――やばい。僕もサファイアが記憶を取り戻せたのか、気になってきた(笑)
『リボンの騎士』、声、そして自分が生まれてきた意味。
泣きました。それはもう、泣き崩れました。単行本2冊で4箇所泣き。泣き指数で言えば、『G戦』すら上回る快作でした。
<終>
序を踏まえた描き下ろし作品。まー、オマケですから。
11話の完成度は無茶苦茶高かったのでココで完結しても不満はないのですが、やっぱり『金魚屋古書店』の方も楽しみな訳です。今から読むわけです。そして、長々と感想書くのです。 |