金魚屋古書店 2巻 金魚屋古書店 1巻 金魚屋古書店出納帳 下巻 金魚屋古書店出納帳 上巻



金魚屋古書店 2巻 Amazonで購入
芳崎せいむ
小学館・IKKIコミックス
2005年8月30日・発売
人間ドラマ・古漫画・商店
 やってしまいました。またしても各話感想。
 これは負担になるからやるべきでないんだろうけど、『金魚屋』に関しては毎回毎回語りたいことが出てきちゃうので致し方ないです。「楽しいから良いや」と開き直るべし。

 表紙は斯波さん。読んでる本は・・・・・『汽車旅行』は分かるけど、あと2つは何だろう?

<第8話:彼の風景>
 こちらのトビラも斯波さん。「一気読み」と「IKKI」をかけたTシャツと散らばる無数の古い本・・・・『ブラックジャック』以外は分からないなぁと思っていたら、ジャンプコミックスがありますね。裏表紙のあらすじが入るようになったのはここ4、5年のことだと思うので、比較的最近の本かな。あんまり話題に出ないけど、金魚屋の連中は最近の漫画も読んでいるんですね。
 あと、「夏子」という作者のマガジンコミックスが。『オフサイド』の後期か、無印『Jドリーム』かな。『飛翔編』以降は裏表紙のデザインが変わってしまったから。

 本編は手塚治虫の超名作『アドルフに告ぐ』。高校時代、生徒会室にあった1巻だけを読んで、2巻が置いてなかったので悶々とした作品でした。古本屋やヤフオクでチェックしているのだけど、なかなかめぐり合わせることがなくて・・・・・時間できたら意地でも読んでやろう。
 アドルフの名を持つ3人を描いた『アドルフに告ぐ』と同様に、自分と同じ名を持つ定時制の同じ席の男に『アドルフに告ぐ』を借りた男の話。違う世界から届く手紙は、現実から目を背けていた彼の心に突き刺さる―――という話。相変わらず、この手の話を描かせれば芳崎せいむの右に出るものはいないってほどのクオリティ。ラストシーンで泣きました。まぁ、この漫画の場合は「ワリと頻繁に泣いちゃう」ので、それほど珍しいことじゃないですが。

 しかし、この関口という男。『アドルフに告ぐ』の初版本を、「古い本だから古本屋で買って返せばバレないよな」みたいなこと考えやがって。ヲタクでない人には初版本の価値ってそんなものなのか??


<第9話:ありかなしか>
 トメさんと斯波さんの出会い―――
 ギャグなのかマジなのか、妙にシリアスな序盤に大笑いしてしまいました。「報酬は?」で藤子不二雄の漫画が出てきたトコとか。いや、そりゃ。漫画読みにしてみれば現金よりも嬉しいんだろうけどさ!なんかもう登場人物が全員漫画を中心に回ってるのが凄く楽しい。

 
「まるで抱えている漫画からエネルギーを与えられているような・・・・」

 『武装錬金』かよ!(笑)

 
「斯波尚顕、この世の漫画を2種類に分けるとしたら・・・あんたには、いったい何と何になる?」
 「俺が読んだ事ある漫画と 俺がまだ読んだ事ない漫画」


 でも・・・・この1ページでまたしても泣きました。ギャグメインだと思ったら、いきなりコレだもんなぁ。こういう構成、小手川ゆあに通じるものがあるかも。それまでの流れとたった1ページで読者の心を突き破ることのできる漫画家ということで。


 しかし、7年前を舞台にしていることでところどころにツッコミどころが。
 トメさんは現在で推定28くらいだと思っていたので20歳前後なのは丁度計算が合うのですが。斯波さん、今と顔が一緒じゃねえか!!いやいや、斯波さんは譲るよ。菜月さんは何歳なのよ!?
 意図して顔を描いてないってことは「企業秘密」だってことなんだろうけど・・・・今の菜月さんが23〜4だとしたら、16〜17? そのくらいのコに言い寄っていたとなると、斯波さんもロリコンということになるが(笑)

 それと・・・・・7年前の月マガの表紙が『DEAR BOYS』と『海皇紀』だったのに笑いました。今と変わらんじゃないか。


 ※ ちなみに、ラストシーンでトメさんが『まんが道』を読みながら『バラとゆびわ』ってこういう話だったんだと言うシーンがあるんですが―――『まんが道』の中に藤子不二雄両先生が悪戦苦闘して『バラとゆびわ』を描くシーンがあって収録されてるとか。『まんが道』も読んでおきたいなぁ。


<第10話:窓のむこう>
 キャバクラ嬢(ホステス?)と母親に置いてかれた少女の話。
 題材は『宮澤賢治 漫画館』―――宮澤賢治の童話を一流漫画家達が漫画にした本らしいのですが。この話を読んで十何年ぶりに『やまなし』の冒頭部分を読んで、「あー宮澤賢治が読みたい!どうせなら漫画版を読むか!」と思った僕は、Amazonで探したみたところ―――在庫切れでした。そりゃそうか。

 杏とユキちゃんの関係は萌えますね。「じゃあペチャパイ」と言われて「痛い所を突いてくる・・・」と言っていた杏だけど、正直杏でペチャパイだったら世の貧乳好き男子が怒り狂いそうなサイズですよ。僕にしてみれば、杏くらいでも「デカいや」と思うほどです(笑)


 それにしても
 
「手塚治虫・・・・ってアトムの人?ドラえもんだっけ」
という台詞がショックでした。そうか、ヲタでもない20前後の人にとって手塚治虫の存在ってそんなものなのか。ジャンプを毎週読んでる男友達(非ヲタ)が『ブラックジャック』の存在を知らなくて驚愕したことがあったけど、世間一般の認知度ってそんなものなのか。




<第11話:紙の束>
 カラーページ(巻頭カラー)ということで、菜月さんと斯波さんメインの話。
 特に菜月さんメインの話って今までなかったろうから(主役なのに・・・・・)、彼女がどういう経緯で金魚屋に来たのかとか、どんな気持ちで店長代理をやっているのか―――とか。なかなか見えなかった部分が見えて楽しかったです。菜月さんの衣装がコロコロ変わって可愛かった。
 地味な成長なんだろうけど、『出納長』初期よりも芳崎先生のどんどん絵が上手くなっている気がします。菜月さん、どんどん可愛くなっています。

 金魚屋でどうやって暮らしているんだろうと思っていたんですが、ダンジョンで暮らしているのは斯波さんだけで。菜月さんの部屋や台所や居間とかは地上部分にあるのね。そりゃそうか、二階建てっぽいものね、金魚屋って。これなら菜月さんの貞操も安心・・・・・・・か?


 
「どうした “金魚屋”」
 トメさんの台詞がカッコ良すぎ。「菜月さん」ではなくて「金魚屋」って呼ぶのが良いですね。

 でも、
 
「マンガキングだ」
 「河井キング」
 「ほら、テレビの・・・・・」

で吹き出してしまいました。何この人達にとって河井さんってそんな有名なの?ただのテレビチャンピオンなのに―――凄いなぁ。この漫画の世界って本当に漫画中心で周っているんだなぁ。住みたい。こんな世界に生まれたかったです。



<第12話:父再び>
 
「シバさん、知りませんでした?
 菜月さん、こう見えて筋金入りのマザコンなんですよ」


 何ィ―――!!?
 斯波さんですら知らないことをどうしてキンコちゃんが知ってるんだとか、そういうことは置いといて。実母にデレデレ状態の菜月さんがめっさ可愛い!!凄いよ、何だよ彼女。もう完全に「恋する乙女」の顔になってますよ。萌える。コレに萌えずにいられるかってんだ。姉妹萌えも素晴らしいけど、母娘萌えも密かなブームですよ!

 だからというワケじゃないんですが、僕は2巻ではこの話が一番好きかなぁ。
 細かいところにもこだわられていて。

 ○ 「ういっす。「スラムダンク」っスね。旦那」
 トメさんってそう言えばジャンプ黄金期世代なんですよね。子どもの頃は『キャプ翼』観てたらしいし。あゆさんにとっても、まぁコレだけ有名な漫画を読んでいないワケないし。最近の漫画について触れられることが少ない『金魚屋』なので、やけに新鮮に見えました。

 ○ 「しかーし、その2ヵ月後誰もが予想し得なかった大どんでん返しが」
 周到な計画を立てていつつ、「誰もが予想し得なかった大どんでん返し」を予想しているパパに笑いました。この人、この後に何を言うつもりだったんでしょうか―――すげー気になる。

 そういや、この前の回で菜月さんが「あの親元にいたくなくて」と言っていたのはこういう理由だったんですね。父初登場の回は結構親しげに話していたので、どういうことかと思っていました。

 ○ 「ぷっ、全然。崋山はもっとかっこいいっしょ」
 『OPEN MIND』に続くセルフネタ。
 でも、どっちかというと「イケメン」と称される斯波さんと違って、崋山の方が冴えないダメ男って言われることのほうが多くないか?

 ○ 「いやいや、礼なんて言われてるうちは女もまだまだ半人前」
 両親のことで悩む菜月さんと並行させて、1巻で描かれた「ねこたま堂」のその後に奔走するあゆ&トメさん。これが一本の線に繋がるという構成が堪りません。

 そういや・・・・あゆさんが『ハチクロ』の山田さんに似てると思っていたら、この旦那さんは真山に似ているように見えてきた。斯波さんはまんま森田だし。竹本は河井キングの息子か?となると・・・後ははぐと修ちゃんだけど・・・・ビリーがはぐで、じいちゃんが修ちゃん?? いや、何言ってんだ俺は・・・・・・


<第13話:1%の漢>
 うーん? この漫画にしては序盤が詰め込みすぎで、斑鳩くんの葛藤とかオジサンのキャラとかが上手く伝わなかった回じゃないかなぁ。最初の店で店員さんに訊けなかったオジサンが次の店ではフツーに訊いていたり、店員さんに訊けなかった斑鳩くんがオジサンには訊けたり。ちょっと「??」という場面がチラホラ。オジサンが漢を見せるシーンとかは流石なんですけどね。

 ちなみに店長が買っていた漫画は、今人気絶頂の少女漫画3冊。。
 『のだめカンタービレ』・・・KISS連載。音大を舞台にした漫画。
 『NANA』・・・書店での瞬発力は『ワンピ』以上という化け物漫画。2005年映画化。
 『ハチミツとクローバー』・・・美大を舞台に男女5人の片思いを描く青春漫画。“フジの深夜アニメ”という鬼門で2005年アニメ化。実写映画化も決定した話題の作品。

 『金魚屋古書店』の中に登場する漫画は古い漫画が多いので、店長がこういう“今話題の漫画”を楽しみに読んでいることには驚きました。でも、それこそ
「どの漫画も、どれだけ心がつかまれるか、読んでどれだけ魂が揺さぶられるか、そこに意味があるんじゃねえのかなあ」ってことなんですよね。納得。『のだめ』読んでみたい、非常に。


<第14話:星の旅人>
 題材は『銀河鉄道999』。
 河井キングの息子が主役ということで、小学生男子同士の微妙な関係がメインで描かれていますね。元々少女誌で連載されていたこともあるんだけど、この漫画の視点は女性とか女子よりにあったので―――こうやって男のコ視点というのは珍しいかな。いや、あんまし男のコ男のコしていないんですけど(この二人を女のコに描き替えても話が成立してしまう)・・・・・・

 
「それで? どこまで遠くに行ったって何も変わる所はなかった、そんな事が言いたいんですか。」
 「いいや、そんな事はなかったよ。」

 あぁ・・・この台詞は胸キュン。トメさんが子どもの前だとキャラ違うのには笑ったのだけど、この台詞は斯波さんでも店長でもなく、トメさんにしか言えないセリフだなぁと。


 それはそうと。河井キングの奥さんが相変わらず可愛い。
 この一家だけでも一つの漫画が作れそうなキャラですよね・・・・・・



<ビリーと店長の底なし珍道中記 巻の2>
 オマケ漫画。
 小学館の背表紙に載っているクローバーマークの秘密に探る話。まぁ、実は結構有名な話ですよね。我が家で言えば、『MASTERキートン』1巻はマークなし、2巻〜はダイヤ、『MONSTER』5巻からペンタゴン、12巻からクローバーでした。外税表示だからクローバーってことは消費税が上がってもそのままなのかな。じゃないと、「段階的に消費税率を引き上げる!」のたびにマーク変えないとならんし。



 という訳で2巻も読了。これからまた8ヶ月間もお預けなのか・・・・・・・・
 『出納帳』時代と比べると、菜月さんも斯波さんもどんどん幼い顔になっていってる気がしますね。菜月さん、可愛いよ。エプロン姿の女性ってステキですよね。














金魚屋古書店 1巻 Amazonで購入
芳崎せいむ
小学館・IKKIコミックス
2004年12月24日・発売
人間ドラマ・古漫画・商店
 流石に『出納帳』上下巻よりかはパワーが落ちたかな? まぁ、あのパワーを持続出来たなら化け物だとも思いますし、落ちたとは言ってもトップクラスの面白さには変わりないんですけどね。金魚屋の面々がコメディの様に動き回る第5話がお気に入りです。それと、巻末に収録されてるコラムもとても面白い。作内に登場する古漫画を、当時の様子やその影響なんかを踏まえた上で解説してくれてます。実はIKKIで第1話を読んだ時、このコラムだけでもコミックスを買う価値があるなーとチェックしていました。

<第1話:思い出の成分>
 僕が芳崎せいむさんを「芳崎せいむ」という一人の漫画家として記憶するに至った第1話。これをIKKIで立ち読みした時の衝撃は、今でも覚えてます。その後はIKKIを立ち読みする余裕がなくなったため、「コミックスが出たら買おうかなー」くらいに留めていたんですが、数ヵ月後にスピリッツで始まった『テレキネシス』で“最も注目する作家”さんになってしまった訳です。まぁ、そのくらいインパクトのある第1話だったということですよ。

 菜月さんはともかく、斯波さんは4コマしか登場してません(笑)
 この回の主人公は30歳前後の普通のサラリーマン。いい大人なんだから漫画を「卒業」すべきかを考えていたんだけど、同窓会で皆が昔の漫画の思い出を意気揚々と語るのを見て・・・・・というお話です。一つ一つのセリフがキレイで、全部のコマが意味深い。『Dr.スランプ』『おれは鉄兵』『がんばれ元気』『釣りキチ三平』・・・・・・・・あの頃、僕らの心を構成した漫画達は。ラストの菜月さんのセリフが良すぎです。この1話がなかったら、『金魚屋』との出会いもなかったのかと思うと感慨深い。

 そういや、安彦良和って僕が生まれる前から漫画家やってたんですね。『アリオン』の連載開始が79年ってことは、もろ『ガンダム』と同じ年じゃないですか。超過密スケジュールでぶっ倒れてたりしてた時期に、漫画の連載なんか持ってたのか・・・・・・??

<第2話:北斎漫画>
 才能を持たないことに悩む女と、才能を持ちながら情熱を持てない男。
 二人の美術学園の生徒を描いた話なんですけど、北斎のことも『百日紅』も知らない僕には何となくでしか分からなかったです。巻末の『百日紅』の解説を読んで、ようやく村尾くんの「俺は実咲さんと違って、絵を描かなくても毎日を生きていける人間だったから」というセリフの意味が分かりました。

 『百日紅』を描いた杉浦日向子さんが、この村尾くんのように漫画界を去っていってしまった人なのだという。それに対し、「あぁ・・・・やっぱりどうしようもく、絵が描きたいなあ」と言える実咲さんはまだまだ絵に狂えているという。芳崎先生自身を含めた多くの漫画家の言葉を、実咲さんに代弁をさせているのだと思います。こんなにも多くの漫画が次々と生まれる訳―――そういうことなんだと思います。

<第3話:遠くまで>
 斯波さんがようやく登場!
 でも、赤塚不二夫読んで爆笑するのが初登場シーンだとは(笑) しかも、この回の見せ場は店長に奪われてしまってるので、ほとんど印象に残らず。むしろ、店長の復帰祝いに呼ばれていない須藤クンが気になります。まぁ・・・・・店長と面識ないですしね。

 片意地張って生きるしかなかった優等生が、赤塚不二夫・吉田戦車というギャグ巨頭を読んで涙するお話です。

<第4話:少年探偵登場>
 ビリー登場。
 ようやく金魚屋古書店チームの出番が増えてきました。女のコ3人のやり取りが好きです。

 あの手塚治虫氏が「もし河島氏がもっと長く生きていればきっと漫画界の第一人者となっていただろう」と評した『ビリーパック』に憧れる、菜月さんのイトコが登場ですよ。『ビリーパック』、凄く面白そうなのだけど、現在は復刻版ですら1冊2000円以上の相場みたいです(ヤフオク調べ)
 ビリーという究極の天然キャラを得たことで、各キャラがいきいきと動くようになりましたね。菜月さんなんかアホ毛立ってるし。そのコメディチックなやり取りから、一気に落とし、一気に上げるのが涙腺を揺さぶってきます。とっさに着替えてるあゆさんがステキ。

<第5話:漫画のない国>
 隅から隅まで大好きな第5話。斯波さん可愛いなぁ。惚れた女の為に夢中になれる男ってのは、男から見ても格好良いです。小手川漫画の男性キャラが好きなのも、この辺りに理由があるのかもです。

 一気に掘り下げられる斯波さん。誕生日は7月17日の漫画の日。そして、誕生日には彼にプレゼントを渡すために殺到する子どもからお年寄りまでの女性客。自筆で幕末漫画を描いて綴じて渡す女性。『ドカベン』全試合全スコアのデータをまとめて渡す女性。何コレ(笑) すげー楽しそうだ。僕もこんな町に住みたいですよ!

 誕生日の夜に、そっと出されてる茶碗蒸しが良い感じ。うわぁ-ん。菜月さんも可愛いじゃないか!
 と思ったら、菜月さんの前に現れた一人の男性を巡り、斯波・ビリー・あゆさんで追いかけるという展開に。この3人のやり取りが楽しいんですよ。唯一常識があって、漫画の解説も出来て、ツッコミも出来るあゆさんは(お話作りにおいて)良いコだと思います。

<第6話:藤臣君>
 第1話と同じように、既に大人としての時間を生きている人が昔の漫画と再会して今を生きようとする話。今回の主役は専業主婦なのでサラリーマン以上に、「日々が穏やかであること」に寂しさを感じているという。これが古漫画をきっかけに新しい人間関係を構築して、また再構築していくってのがステキでした。

 それはそうと、店長とビリーが諸国漫遊の旅に。店長は最強キャラ過ぎてこうなることは必然でしたけど、ビリーは良いキャラだっただけに残念。

<第7話:セドリ稼業>
 出ました!あゆさんメインの話!
 苗字が判明。「小篠」だそうで、チビっこい頃のあゆさんも可愛いです。

 女でありながらセドリを続けることの難しさも、プライドを売りさばかねばならない現実も。それでも漫画を通して人々が生きていく時間が大切だってことを、貸本屋のお婆ちゃんから学んだ。だから―――
 「女だから」というあゆさんの中でネガティブだった要素が、自分と同じように漫画の持つ時間を大切にしてくれるオカドメと手を取り合って裏っ返るラストが凄い。。オカドメに手を引かれるコマ、そっと涙が流れていくのが非常にジーンときた。この回、画力がトンでもないことになってますよ。

 ひょっとしたら、この『金魚屋古書店』1巻で最も出番の多いキャラってあゆさんじゃないでしょうかね。可愛いから嬉しいですけど・・・・・・『出納帳』知らない人のことを考えるとフクザツ。

<ビリーと店長の底なし珍道中記 巻の1>
 オマケ漫画。
 訪ねた美大の文化祭にて起こった事件とは??

 1巻という形ですけど、『出納帳』上下巻を読んでいないと楽しさは薄れるかもって感じです。イメージ的には3巻だと思った方が良さげですよ。このタイミングで『出納帳』を出した小学館は商売上手だなぁって思いました。














金魚屋古書店出納帳 下巻 Amazonで購入
芳崎せいむ
小学館・IKKIコミックス
2004年12月24日・発売
人間ドラマ・古漫画・商店

※ 少年画報社より2003年6月26日に
発売された本の新装版です。
そちらの情報はこちら
大人の事情というものがあるのですよ。
 下巻もフルパワー全開です。やっぱり最終話のそれが印象深いです。
 “漫画好き”という属性はどんな分野でも否定的に描かれることが多いんですけど、この漫画においては暖かく描かれ、作者さんは本当に“漫画好き”を好きでいてくれてるんだなぁって思います。「漫画を好きな人はみんな幸せになって欲しい」 こんなメッセージを残せる人はそうはいませんもの。

<序>
 キンコちゃんが案内する金魚屋古書店。
 菜月さんが大股開きで居眠りしてます。

<第8話:青い空、白いボール>
 恐らく、ウチを読んでいる人にもかろうじて分かるのはこの作品くらいだと・・・・・
 あだち充の傑作『タッチ』にまつわる名エピソードです。
 
「わがままだけど、一日一冊ずつ貸してね。だって、なんか一度に全部読んじゃうのはもったいないもん」
 好きな女のコに漫画を貸す話。1日1冊漫画を貸していけば、毎朝話せるという喜び。そして、一緒に笑い、一緒に泣けるという悦び。長谷川君の気持ちが凄く分かります。僕も高校時代は持ってる漫画のほとんどを貸してました。まぁ、あんまし報われることはなかったけど・・・・・・・
 カッちゃんのシーンで泣き腫らしていた芦野さんが凄く良い。そして、そんな芦野さんのためにスーパーマンになろうと、足りなかった最終巻を探してまわる長谷川君も凄く良い。漫画を通じて、こんなに淡い気持ちを思い出させてくれるとは・・・・・・・

 
「対須見工決勝戦・・・・10回裏ツーナッシング
 ピッチャー上杉・・・・和也があきらめたか・・・? 達也が一度でもあきらめたか?」


 こればっかしは『タッチ』読んでこその感動かも。震えまくり。ラストシーンを受けて、扉の1ページ目を読み返すと芦野さんが26巻の「上杉達也は!」のシーンを読んでいるというラスト。長谷川君の気持ちはきっと届いたはず・・・・・・・凄く良い話でした。

<第9話:おかえりなさい>
 親の汚職で居場所を失った娘。
 親に見捨てられた息子―――行くアテのない二人が出会った一人の子どもとは、という話。『フランス窓便り』、名前も聞いたことがなかったです。そのせいか、ラストシーンの意味が分からなかったり。

 でも、ダラダラと店番をしていた菜月さんが元気になるって描写が良かったー。

<第10話:2人の漫画王>
 第10話にして、ようやく主人公2人のフルネームが!
 鏑木菜月:店長の孫娘
 斯波尚顕:年齢、出身、経歴、全て不明

 
「クセじゃない、生きがいだ!!いったいその人が何を読んでいるのか確かめたいよ!遠くのほうにチラッと見えるページの端だけを頼りに、出来ることなら巻数までをも割り出したい。そして、自分と同じ好みのまんがを読んでいる人には心の中から熱いエールを送りたいんだッッ!!

 斯波さん、全くもって同感です(笑)
 しかし、思ってはいたけど誰にも恥ずかしくて言えなかったことを、いとも簡単に言語化してくれる漫画です。斯波さんは心のヒーローです。僕も電車の中で漫画を読んでいる人がいたらチェックします。んで、下らない漫画だったりしたらガッカリします。ジャンプやサンデーの漫画を読んでいる女子高生にはあんまし萌えませんね。村上かつらとか読んでいたら、その場で求婚してしまいそうです。

 TVチャンピオンのような番組で、打倒斯波を宣言する男の話。自分の蔵書を守るため、セコい手を使おうとするんだけど・・・・・・皆がただ漫画の趣味を共有するように楽しみあうようになってしまい―――
 ラストシーンに冒頭の斯波さんのセリフが伏線としてかかっているのが流石です。なんで彼らはこんなにもイキイキしているのでしょうか。眩しすぎ。

<第11話:漫画の神様>
 漫画好きが高じて家族を捨てて出て行ってしまったお父さんと、何故だか病院を抜け出して失踪した金魚屋店長を探す話。物凄く長いけど、物凄く感動した話です。「漫画なんてたかが紙の上だけのこと」という千草ちゃんのセリフが、終盤で色んな意味になって跳ね返ってくるのが見事でした。
 『風のゆくえ天のめぐり』―――何故だか解説の載っていない漫画が出てきたなぁと検索してみたら、芳崎先生の作品だとか(笑) 自分で自分の作品を“誰も知らないマイナー漫画”と称するとは。
 “千草”と“謙一”という二人の子に名づけられたメッセージ。“千草”は本編で解説されていたので、“ケン一”についてちょっと解説しますね。手塚作品はスターシステムという手法をとっていて、複数の漫画に同じキャラが登場したりしたんです。“ケン一”は初期手塚作品の主人公として描かれた少年。なので、初期作品の多くに登場している訳です。最近観た映画版『メトロポリス』(監督:大友克洋)の主人公もケンイチでした。

 手塚記念館も水木記念館も、観光ガイドに載せたいほどに楽しそうな様子を描写してますね。かなり行きたくなりました。謙一が怖がって菜月さんに抱きつくところが良い感じ。

 千草ちゃんがお父さんを探して、お父さんが働いていた職場を転々とするんだけど、これが漫画の製造過程と重なって―――漫画では繋ぎとめることが出来なかったパパとママの仲は何だったのという問いに。

 そして、手に取ろうとする『リボンの騎士』。
 『リボンの騎士』は昔に古本で読んだけど、既に家にはなかった―――やばい。僕もサファイアが記憶を取り戻せたのか、気になってきた(笑)

 『リボンの騎士』、声、そして自分が生まれてきた意味。
 泣きました。それはもう、泣き崩れました。単行本2冊で4箇所泣き。泣き指数で言えば、『G戦』すら上回る快作でした。

<終>
 序を踏まえた描き下ろし作品。まー、オマケですから。


 11話の完成度は無茶苦茶高かったのでココで完結しても不満はないのですが、やっぱり『金魚屋古書店』の方も楽しみな訳です。今から読むわけです。そして、長々と感想書くのです。















金魚屋古書店出納帳 上巻 Amazonで購入
芳崎せいむ
小学館・IKKIコミックス
2004年12月24日・発売
人間ドラマ・古漫画・商店

※ 少年画報社より2003年4月3日に
発売された本の新装版です。
そちらの情報はこちら
大人の事情というものがあるのですよ。
 どんな古い漫画でも見つかる伝説の古書店「金魚屋古書店」
 その店主が入院したことで、跡を継いだずぶの素人である女のコ。その蔵書を愛するがゆえに、彼女にモーションをかけ続ける史上最強の目利き店員(バイト)。

 ちょっとは漫画に詳しいと言っても、所詮僕なんかは自分が生まれた後の漫画しか知らないんで、ここに登場する“名作漫画”についてはほとんど読んだことはないのですが―――この店と漫画を中心にした人間ドラマがひたすら素晴らしいんです。漫画ヲタ以外にも読んで欲しい一作なので、生まれて初めて各話ごとに感想を書くことにします。『恋風』でもやらなかったのに。

 名前の出てくる古漫画はどれも解説が載っているので、古漫画に詳しくない方でも安心して読めますよ。

<第1話:009の時代>
 父親が遺した『サイボーグ009』の主人公に恋をしてしまった少女の話。
 この頃は今よりも少女漫画チックな画風ですね。今ではすっかり青年誌に溶け込んだ女性作家さんという感じですが・・・・・まぁ、どっちにしても上手いです。白黒の方が持ち味出ていると思います(失礼な)
 周りの女のコがジャニーズの話で盛り上がる中、輪の外で『009』のことを考える。
 
「ワタシだって、毎週『キング』や『マガジン』が出るのをわくわく待ちながら、その時にジョーを感じていたかった。みんなといっしょにジョーを見つめていたかったよ・・・・」
 まさに『完結漫画応援サイト』であるウチに相応しい回でした。過ぎ去ったものは誰とも共有できないという寂しさは、漫画でも映画でも小説でも音楽でも、創作物を愛する人なら誰だって経験したことがあるでしょう。

 この感情を「逃げ」なのかという少女の感情がラストで裏返るんだけど、このシーンがとってもステキですよ。少女漫画チックなコマ割と、張られていた伏線が活きて、彼女の心情がキレイに描写されてます。この第1話を読んだだけで既に虜に・・・・・・・・

<第2話:あの川べりで>
 叔父さんと姪っこの話。
 “死”を悟った叔父のために水木しげる『河童の三平』を探す女子高生が主役なんだけど・・・あんまし『河童の三平』は関係ないですね(汗) 4つあるというラストを求めて、彼女は金魚屋古書店を訪れるんですが、そこで叔父がこの漫画を読みたがる理由を知ってしまうのです。
 
「そうか・・・・では、やはり。ちぎれるほど哀しむのは取り残されるこの世のほうなのだ」
 この1話も心情描写が凄いです。ラストの叔父さんの言葉と、ラストシーンの意味を考えると、無茶苦茶切ないです・・・・・・

<第3話:たいせつなこと>
 第3話なのに、未だに店側の描写が皆無です(笑)
 女子小学生(6年生かな?)が主人公ですけど、けっこう顔立ちがオトナっぽい。その割に『なかよし』とか『H×H』とか読んでいるのね。いや、『H×H』は大人びたマンガか?ん?どうでしょう・・・・・・・・
 女のコだけの溜まり場と化した待合室にあったという伝説の少女漫画誌をめぐって、二人の女のコが手を取り合うまでの話です。その漫画雑誌の名はリリカ。詳細が載っているページがあったので、紹介します。こちらですね(図書の家さんより)
 ちばてつやさんは読みきりみたいですね。手塚治虫氏のは連載、後のリリカには石森章太郎氏なんかも連載していたとか。すげー。

<第4話:共通言語>
 「さらわれそうになってた漫画本がかわいそうだったの」
 たったそれだけのことで万引き少年を捕まえた女のコに近づくため、古漫画を勉強しようという大学生の話。僕も相当なヲタだけど、この女のコはきっついなぁ〜。 『火の鳥』はこの上巻に出てくる漫画の中で唯一読破した作品だけど(『H×H』は別ね)、それでもこのクイズは分からなかったです。

Q.『火の鳥 未来編』の地底都市で戦うコンピューター二つの名前は?
 A.
ハレルヤとダニューバー(←反転させてます)

 んなの覚えてる訳ねえ。「マギ」かと思ったけど、それは『エヴァ』でした。あの話、ロックの空回り具合だけは何故だか印象に残ってるんですけどねえ。つか、女のコをキャンパス内で口説いてるのに「地底都市」なんて言葉が出てくるとはなぁ。色気があるんだか、ないんだか。ラスト、金魚屋の蔵書との比喩で、「分からないからとりあえず一つ一つ好きになっていく」という結論を出した須藤クン燃え。
 ということで、斯波さんが初登場。ようやく金魚屋が掘り下げられることに。菜月さんも斯波さんが出てきてから輝いてますね。斯波さんのこのセリフ、すげー好き。

 
「(その作品)なら両方とも新刊書店で買えますよ。新刊で買ったほうが書店さんも出版社さんも喜びます。こんな発言、営業妨害だって菜月さんに叱られますけどね。」

 万引きといい、新古書店問題といい、コレといい。
 この作品に出てくるキャラは本当に漫画が好きなんだなぁって思います。

<第5話:「セドリ屋」さん>
 こんな世界があったとは、新古書店から逸品を探し当て専門店で売りさばくという漫画のセドリ屋さんのお話。どうやら自分以外のセドリによって品が既に買われているようなのだが??
 この辺りから構成が神がかって来ましたよ。セドリを始めたのは漫画を愛するがゆえだったことを伏線として描写しつつ、ライバルのセドリとともに万引き少年を退治。あぁ、コイツも心底漫画が好きなんだなってお互いに認め合い、次のセリフに。

 
「ずっと変わらない価値なんてない。絶対的な力を持った確かな値打ちのものなんてない。だから、本棚の海の中は気持ちいいんだよね」

 これは、今の新刊も何十年も経てば古書としての価値が出てくる―――みたいな文脈なんだけど、何も価値が変わるのは時間の経過だけじゃない。人によって本の価値なんて様々で、自分には何の興味もないこの本が、他の誰かの心を救っているかも知れない―――そういう意味だってあるんだなあと暖かい気持ちになったのですよ。

<第6話:さらば火星よ>
 珠玉の1話。
 斯波さんメインの回です。キンコちゃんと須藤クンの来店をきっかけに、幻の名作SF漫画『火星探検』のオリジナルバージョンを手に入れられるかもと喜ぶ斯波さん。ただのマニアなんだけど、斯波さんがちょっと可愛いです。菜月さんを口説く時のセリフが「高橋真琴的」ってのはどうかと思うけど(こんな感じ?
 その『火星探検』、見つけたときには既に左上が焦げてる状態で真っ白に燃え尽きる斯波さん(関係ないけど、この本ってカバーが箱みたいになってるんですね。斯波さんと菜月さんが2冊持っているのかと思っちゃいましたよ?)

 
「ああ・・・俺はナゼ紙にコマ割って絵描いて文字打ってインクで刷って束ねて片側止めて表紙をつけただけの物に、こんなに人生を奪われているのだろう」

 ギャグみたいなセリフだけど、これが後々ひっくり返ってくることに。
 斯波さんが涙を流して哀しんだ左上の焦げの意味―――それを理解した時の斯波さんの行動と、その後の菜月さんの反応がまたイイ。無茶苦茶泣けました。

<第7話:父の背中>
 珠玉の1話.2
 どうやら少年画報版の時のコミックス描き下ろしみたいなんですが、とてつもない完成度ですよ。これが描き下ろしなんて勿体ない。『ゴルゴ13』にまつわる話です。
 
「しっ・・・信じられない。『ゴルゴ13』を読んだ事のない日本成人男性ががこの世に存在していたなんて・・・・・・」
 あゆさん、可愛いです。実は僕も数話しか読んだことがないですわ・・・・・しかも、「たまたま今まで読まなかった」というだけで。
 そういう小ネタで言えば、「22号・・・」「鉄人?」「それは28号」「アキラ・・・」「それも28号」というシーンがあって、須藤クンだけが理解できないんですが。大友克洋『AKIRA』の中で、アキラの実験体ナンバーが28号というネタですよね。どうやら、大友克洋『AKIRA』の方が『鉄人28号』を元ネタにしていて、金田も鉄雄も『鉄人28号』に出てくるキャラからとったらしいです。しかし、『AKIRA』はこの作品の中ではやたら最近の漫画ってイメージですよね(汗)

 本編。生真面目な父が唯一の楽しみにしていた『ゴルゴ13』の別冊版、父らしく全部揃えてキレイに並べてあったのだが―――何故だか22号だけがない。その父に触れるために22号を探すのだけど、それ自体には何もなくて・・・・・・・
 父と子が生きてきた時間を、時事ニュースで表現するのが上手いなぁと思いました。
 サイゴン陥落:1975年4月――高志が1歳
 日航機墜落事故:1985年――「これは大人が読むものだな」
 ペルー日本大使館人質事件:1996年12――高志がセドリ屋に
 北朝鮮拉致被害者帰国:2002年10月―――現在

 生真面目だった父の性格が裏っ返り、あの時の父の一言の意味が裏返るラスト。ここもマジ泣き。二連続で泣かされたのは、どちらも“漫画とともに流れた時間”に関して。あぁ、こういうモノを大切にしてくれる漫画があったんだなぁと思いますよ。


<特別読みきり:古漫館物語>
 どうやら『金魚屋古書店出納帳』のプロットとなった読みきりらしく、細かい設定は異なってますね。菜月さんは「なつめ」だし、おじいちゃんは死んじゃってるみたいだし。発表されたのも『マグナム増刊』ということですから、出版社まで違うらしいです。ちょうど出版社が古書店・新古書店と戦っていた時代だったので、この出版社では続けられなかったという・・・・・・勿体ないことをしたもんですよ。
 それにしても、この回が一番主人公が可愛いですね・・・・・・・・・・子どもの頃のなつめちゃんがひらがなしか喋れないのが可愛いです。

 相変わらず、この頃から構成力はトンでもないですね。バナナウーロン茶に絡めて、なつめの性格を表現してるのが凄いです。これを連載化させなかった出版社って一体何を考えていたのか・・・・・・

<金魚屋日記・本棚の巻>
 IKKIコミックス版に追加された描き下ろし漫画。
 6ページだけですが、非常に癒されます。



Copyright (C) 2004−2005 Manke-II ALL RIGHTS RESERVED.
SEO 掲示板 レンタルサーバー ブログ SEO