鋼の錬金術師 12巻 鋼の錬金術師 11巻 鋼の錬金術師 10巻 鋼の錬金術師 9巻



鋼の錬金術師 12巻  Amazonで購入
荒川弘
スクウェア・エニックス
ガンガンコミックス
2005年11月21日・発売
超能力バトル・ファンタジー
 初回限定版は既にAmazonでは中古のみになっちゃいましたね。25日時点では、店頭にまだまだ在庫残っていたので、出遅れた人は大きめの本屋さんを探してみましょう。


 表紙はリン&ランファン―――剣にブラッドレイの顔が反射しているのが細かくてカッチョ良いんですが、ちょいとしたネタバレです。その背後に銃を持ち泣き崩れるウィンリィとスカー。どんどんシリアスになっていくこの巻を暗示しているような表紙でステキですね。

 背表紙はメイ・チャン(&パンダ)。そろそろキャラが足りなくなってきたような・・・・エンヴィー、グラトニーなんかは残っているけど、その次は誰がいるでしょう。


 本編感想。
 ホムンクルス捕獲作戦のために、スカーにわざと狙われてホムンクルスを誘き出そうとするエド達―――なんだけど、よりによって出てきたホムンクルスがブラッドレイとグラトニー。リンとランファンはホムンクルスの気配を感じることが出来るのだけど、ブラッドレイだけは普通の人間と同じように年齢を重ね、気配を感じることも出来ない。油断していたランファンがブラッドレイに斬られ―――というところから始まっています。では、感想開始。


 ○ リンvsブラッドレイ
 グリードを圧倒したことから分かるように、現時点の敵さんで一番の恐怖がブラッドレイなワケですし―――迎え撃つリンはエンヴィーに苦戦していたくらいでイマイチ頼りなく、なおかつランファンが重傷という絶体絶命の状況から始まります。
 10巻のラスト戦でも書きましたが、この緊張感は序盤でヒューズみたいな重要キャラをあっさり殺していたからこその緊張感ですね。よくよく考えてみると味方サイドはヒューズ以降は死亡キャラは出ていないんですけど―――今回ばっかしはランファンやばいと思いました。

 よりによって、どうしてこのカードなんだよと。
 そりゃロイやエドはブラッドレイを知っているから簡単に対決にはならないんだろうけど・・・・ということはリンが生き残ったら「軍にいる眼帯の男がホムンクルスだ」と知らされることになるので、ここでリンやランファンは殺されてしまうのか?と、あれこれ考えてみて―――

 
「貴方は・・・この国で一番偉い人だナ。たしか、キング・ブラッドレイ大総統。
 王は民のために在る者。民無くして王は在りえなイ。
 キング・ブラッドレイ!貴方は真の王にはなれなイ!!」


 なるほど、コレを言わせるためのこのカードか!
 素晴らしい、心底震えましたよ。“人の上に立つもの”としてブラッドレイとリンを対比させるために、こういうキャラ配置にしたのか・・・・一切のムダがないキャラ配置に改めて恐怖します。リン達を登場させたころから、こういう対決を考えていたのか。


 というワケで―――もう一人、“人の上に立つもの”を目指すロイとブラッドレイの対決も確実な様子。このカードでようやくロイが頂点を目指す理由なんかが明かされるんではないかと。伏線が伏線としてキチッと機能している割に、キャラが有機的に動くので先の読めない展開。うーむ・・・・ホント思うんだけど、この漫画って一般の非ヲタな人達にも人気なのが信じられないんですよね。それほどテクニカルで玄人好みなマニアックな漫画だと思いますよ(誉め言葉です)


 ○ 窮地を脱したランファンの覚悟
 この展開でランファンに惚れない男がいるのだろうか!!
 「捨てんぞ」と決して部下を見捨てなかったリンと、その言葉で覚悟を決めるランファン。この時の眼が素晴らしいです。んでもって、下水道の中での「出し抜いてやったぞ」の表情―――あぁ!初登場時にエドに縛られてエロエロだったコだとは思えない!ムチャクチャ格好良かった。

 しかし・・・・これで彼女も戦線離脱か。機械鎧にしても自由に動かせるまでに1年くらいはかかるはずなので、作中で復活できるかはかなり怪しいところ。ジジイもシン国から帰ってくるには時間がかかるし、リンは今後はエルリック兄弟と共闘することになるんでしょうか。


 ○ スカーとウィンリィ
 最近ほとんど話に絡めていなかったウィンリィが、初めて兄弟が戦う場に居合わせてしまうことに―――しかも、よりによって相手が両親の仇。兄弟が目を逸らしていた事実を突きつけるスカーと、スカーに自分の姿を映し出すウィンリィ。
 ここでスカーが「復讐は新たな復讐の芽を・・・・」とウィンリィの姿に師父の台詞を思い出すなど、これまでに張ってあった伏線を上手に絡めて、もうゴチャゴチャした展開に。スカー自身の過去も何となく分かってきたので、やっぱりコイツは最終的には味方サイドになるっぽい。イシュヴァール殲滅もブラッドレイの指示だったみたいですし。

 そういや、このスカーの兄貴を殺した男というのは4巻に出てたキンブリー?
 このキャラもすっかり忘れてた・・・・・・コイツ、どうなってたんですっけ。時間つくって最初から読み直してみないとワケが分からなくなってきました。


 ○ メイ・チャン、ニアミスです
 10巻にメイ・チャンが出てたのは単なるファンサービスだったみたい。
 エルリック兄弟と遭遇したものの、まだコイツがエドワードだとは知らないんですよね。んでもって、リンともタッチの差ですれ違い。後々これらのすれ違いが伏線になりそうな感じですが―――リンも別段有名人ってワケでもなさそうだし。うーん。

 しかし、まさかパンダが別行動になるとは思わなかった。メイ・チャンとエド達の橋渡し役はリンがやるのかと思っていたんですが、まさかパンダとは(笑) ピラミッドは『ジャガー』なんかではよくあるネタだけど、それでも噴出してしまいました。パンダ、メイ・チャンと同ランクなんだ・・・・・


 ○ ウィンリィとハボック
 6巻のロイとホークアイの時と同じように、2つの場所での会話で一つの答えを辿り着ける構成。こういうの結構描くの難しいと思うんですけど、カッコよく仕上げてきますねー。ロイとホークアイは分かりやすいコンビだったんですが、ウィンリィとハボックは作中ではすれ違ってもいないですよね。
 どういう繋がりかと思ったけど、きっとコレは終盤でこの二人が戻ってくる伏線なんではないかと思います。ウィンリィは戦闘に絡めるワケもないし、ハボックは復帰のメドが立たないし―――メイ・チャンの錬丹術も「流れがとまっているとこはムリ」って言っているし―――どう戻ってくるかは想像もつきませんが。

 しかし、ウィンリィ→エドの感情をちゃんと明言しちゃうとは思わなかんだ。
 10巻からちゃんと「背中」で伏線張っておいたのが大きいですね。キャラのポジションとして、そういう感情に辿り着くのは漫画として必然なんですが、ちゃんと伏線張って段階踏んでいるかどうかは重要だと思います。


 ○ ブラッドレイの正体に気付き始めたエド達
 ランファンの覚悟によって無事に逃げ切ったリンの情報で、ついにエド達とロイがブラッドレイが敵であることを知る。コレは話が一気に進みそうですね。ブラッドレイを追い詰めようとするロイ達と、ホムンクルスと戦うエド達と二面展開になるのかな?

 さて―――それよりもホムンクルス達の目的。
 「国を利用して錬成陣を作ろうとしている」というマルコーの話を踏まえて、4巻のヒューズのシーンを読み直してみると。イシュヴァールの内乱とリオールの暴動から「軍がやばい」という結論に達していたので、マルコー同様に「錬成陣が作られている=それを計画している軍がヤバい」というとこまで踏み込んでいた模様。
 つまり、あの時点でエンヴィーやラストがヒューズを殺していなければ、ブラッドレイの正体がもっと早くバレていたということか。


 そして―――7人目の男:プライド。
 「そっちにはプライドも付いてたはずだ」「グラトニーが捕まった時は現場にいなかった」「余計な時だけ現場に出てくるくせにて」という台詞から見ると、何だか既に登場している味方キャラの一人という気がしてきました。一人だけ顔が隠されているのも怪しいし、ロイが「もしも人間のふりをしているホムンクルスが他にもいて」と言っているのも伏線くさい。

 しかし、グリードが殺された時の台詞を見ると、「人間と同じ気配がする」のはブラッドレイだけで、リンやランファンなら気付ける人物っぽいですね(だからこそ、ブラッドレイは「邪魔な能力だ」と抹殺を図ったのだろうし)
 つまり―――リンやランファンと遭遇していない人物。ロイ組で言えばブレダとフェリーだけど、ブレダは10巻で東部に行っていたので該当せず。アームストロングも同様。ブロッシュ軍曹・・・・はリン達とは会っていないんですよね。怪しいけど、さすがに彼は違うと信じたい。

 ということで、ウチの予想としては大穴でブラックハヤテ号。シルエットが違う!(笑)



 <おまけページ>
 カバー外した背表紙は誰もいません。これだけハデにドンパチやって死人0というのは意外。そして背表紙に誰もいなかったのは、12巻で初というのも意外(実は死んでいなかったというキャラはいたけど)
 カバーの作者コメント、フィクションとノンフィクションの話はあっつい。昔『スラムダンク』で井上先生も「漫画よりも現実の試合の方がドラマティックなんだ」と嘆いていたことがありましたけど、でもそれはどちらが優れているということではなくて、フィクションにはフィクションの良さがあるということですよね。特に『ハガレン』みたいにキチッキチッと伏線張ってくるようなドラマはフィクションならではの美しさですよ。

 ウソ次回予告、すげー笑った。
 「おぬしだけが変身できると思うなよ」って何かのパロな気がするんだけど、なんだっけ。


 質問まんが。
 「物語を作る上で必要のないものは決めないことが多いです」には心底同意。“物語の作り方”みたいな初心者向けノウハウには「キャラごとにパーソナルなデータを決めておくべき」と書かれていることが多いんですけど、趣味や特技や家族構成なんかはともかく、誕生日や血液型って決めたからといって話に絡められるとは思えませんもの。

 「細っこいとメシ食わせてもらってないみたいで」は、ちょっと耳が痛い。僕は細いおにゃのこしか描けないんで、これじゃマズいんだなぁと反省しました。別に現実では細いコが好きなワケでもないんですけどねぇ・・・・・


 <4コマ錬成編>
 というワケで初回限定版の特典冊子。
 DVD収録4コマはアニメ観ていなかったんで、キャラとか展開が分からず、ひょっとしてこれって漫画版の方のネタバレなんでないのと思っちゃって微妙・・・・・

 分量が一番多かったのはトイレに入った人が続きを描くというリレー4コマ。
 これって絵を描いている人が違うってだけで、内容は最初から決まっているんですよね? ちゃんと起承転結できているものばかりなんで、1コマ1コマ各自が考えているってワケでもなさそう。
 しかし、アシスタントでも違和感なくキャラが描けるもんなんですね。むしろ時間的な問題なのか、アシの方が精巧な絵だったりしててビックリ。しかし、高枝さんって人、トイレ近いんだな・・・・・(汗) 4コマ中2コマ描いている作品がチラホラ。

 一番大笑いしたのは最後の「大団円」です。こんな最終回だったら伝説の作品になります。













鋼の錬金術師 11巻  Amazonで購入
荒川弘
スクウェア・エニックス
ガンガンコミックス
2005年7月22日・発売
超能力バトル・ファンタジー
 時間があれば序盤からしっかりと読み直して伏線チェックしてから読みたかったんですが、時間がないので10巻の後半部分から読み直しました。流石に―――ちょっと細かい動きが理解しにくかったりしますね。
 特に“真理”うんぬんの描写はかなり難しい・・・・・とにかく、バリーの“肉体と魂が分かれていた”というのがヒントだったみたいです。うーん、そこまで分かっていても、アルの肉体がどうなってるのかはさっぱり想像できないですね。


 前巻のロス少尉の生存から、エドの決意によって物語が大きく動き始めました。これまでの伏線がチラホラ動き出して、物語的にも完結への道が見えてきたのかな? 個人的にはダラダラせずに、20巻前後までにまとめてもらいたいもんなのですが・・・・・作品の完結の形は雑誌の編集方針が第一に絡んでくるから、どうなることやら。


 ○ エドとホーエンハイムの再会
 セオリーで言えば、ここではニアミスで再会することなく最終決戦時に再会―――ってのが最もベタで盛り上がる展開だとは思うんですが、あっさりここで出会っちゃいました。ギャグ部分が目立っていますが、「その跡を見たくないからじゃないか」という父の台詞と「あの子らは母親の死を二度見てしまったんだよ」というピナコの台詞が、エルリック兄弟の物語を動き出させることに。

 
「あの日から今さっきまで、これは絶望の象徴だった。
 だが、今はこれが希望につながる。なんて事だ・・・・答えはスタート地点にあったんだよ」


 このエドの決意が意味するように、エルリック兄弟の物語はここからが本当のスタートということですね。つまり父との再会がエドの背中を押した形になりました。これまでちっとも目立っていなかった主人公らですが、ここからは彼らメインで、ロイ組は出番が減るのかな・・・・・いきなりギャグ要員みたいになってるし・・・・・

 って、ちょ・・・・ちょっとハボック少尉、ハボック少尉が―――!!
 
「バカだ・・・そんな甘い事でこの国を登りつめられる訳ないじゃないスか」
 ぐわー、久々に涙腺破壊されてボロボロ泣いてしまったじゃないか。熱いよ、何なのこの熱い男達は。ひょっとしたら・・・ひょっとして、ハボック少尉の復帰伏線なのか・・・・コレは?


 ○ スカーとメイ・チャンの合流
 10巻の感想時点で、全くもってアホな僕は、ウィンリィの両親を殺したイシュヴァール人=スカーということにも気付いてなかったです。右腕の入れ墨は4巻の時点で出てきてたのにね・・・・・でも、アレ。エドはスカーの入れ墨を知ったのはブロッシュ軍曹の報告を受けた時ですよね。2巻での遭遇の際はスカーは長袖だったので、知らない筈ですよね・・・・・・額の傷だけでスカーだと判断したのかな。

 メイ・チャンは未だにどんな役割か分からん。リンやランファンを助けるポジション?
 でも、いーや。お供のパンダが激可愛いから。


 ○ 年を取るホムンクルス
 「昔から何も変わらない俺を・・・」というホーエンハイムの台詞から、ホーエンハイムの時間(老化?)が止まったのはこの10年の出来事ではないことが推測できます。単純に、失踪していた時期にホムンクルス化→年を取らなくなった―――というワケではなかったみたいです。
 母さんの遺言も、それを考えると意味深。「先に逝きます」ということは、ホーエンハイムも“いずれ死ぬ”ということを母さんは知っていたんですよね。普通の人間ではなく、かといって完全に不老不死でもない。いずれ死ぬ(殺される?)存在だと。

 ホムンクルスの親父殿=ホーエンハイムというのが分かりやすい構図なんですが、ホムンクルスは7人(7つの大罪を元にしてるので)なんじゃないのかな。ラスト、エンヴィー、グラトニー、グリード、ラース(=大総統)、プライド、スロウスの7人ですよね。親父殿は別格? 親父殿が生んだのが7人ってこと?
 でも―――それだとブラッドレイ大総統を生んだのが親父殿なんだし、ホーエンハイムと同一人物だとすると時間軸がムチャクチャになっちゃわないかなぁ。少なくともピナコの写真の辺り(ピナコが70歳だとしたら40年位前?)までは普通に年食ってたみたいだし・・・・・・・あ、違うか。あの写真の頃のまま何百年も生きてるって見方も出来るか。うーん、それだと母さんの遺言って・・・・(堂々巡り)

 それよか、年を取らないホーエンハイムと対比されるように、年を取るホムンクルス:キング・ブラッドレイが再び表舞台へ。ランファンが感じることは出来なかったというのは、ラストが8巻で言ってた「人間として最後の詰めに用意された」という台詞が意味してる通りなのかな。ランファンのホムンクルス察知能力は無敵化していたので、一気に緊張感出てきましたね。

 1シーンだけ出てきた大総統の養子は伏線?
 そもそも何故養子なんでしょうね・・・・ホムンクルスは子どもが作れないという設定なんでしょうか? そうするとホーエンハイムは?(このタイミングでエドとアルを取り上げた話が出てくるのも怪しい) 結局のところ、この人間←→ホーエンハイムという境界線を曖昧にしていくのがテーマなのかもなぁと思いました。


 ○ ウィンリィとエルリック兄弟
 幼い頃の記憶を共有しつつ、互いに離れていくという伏線がチラホラ・・・・・
 少年漫画として定番の「大きくなる主人公達を寂しく眺める幼なじみ」という構図になりました。これが“タメ”の段階として最後には歩み寄るのか、そのまま別々の道に進むのか―――こればっかしは分かりませんが。

 とにかく言えるのは、女のコのパジャマ姿は可愛いなぁってことです。













鋼の錬金術師 10巻  Amazonで購入
荒川弘
スクウェア・エニックス
ガンガンコミックス
2005年3月11日・発売
超能力バトル・ファンタジー
 「・・・・なんと言うか、デタラメ人間の万国ビックリショーだな」(byロイ・マスタング)

 お前が言うな―――!(笑)
 いやぁ、そんなこんなで、この巻はロイ大佐とホークアイ中尉に全部持ってかれた印象です。この漫画はヒューズやグリードみたく名前があるキャラでもバシバシ死んでいくので、アル以外の全員が倒れた時は「ホークアイ中尉が殺されるんじゃ・・・」と本当にドキドキしました(後から冷静に考えるとロイ大佐にトドメ刺さなかったラストがアホなんだけど・・・・)
 ホークアイ中尉→ロイ大佐の忠義って実はこれまでハッキリとは描かれてなくて、「守るべき人がいるから」という台詞とか東部戦線の時の絵なんかで推察するしかなかったんですよね。なので、初めて彼女が感情をむき出しにする様にグッと来て、そんな彼女を助けるために重傷のロイ大佐が駆けつける姿に震えました。

 んでもって、ここでのロイ大佐の攻撃までが二転三転させてあって熱い!発火布封じのために水浸し→ライターと水素で爆破→復活したラストが手袋を始末→血で手に錬成陣を描いてハボックのライターの火打石で点火!
 この漫画のバトルシーンは「イマイチ錬金術という面白設定を使いこなせていないなぁ」と思っていたんですが、今回のは凄まじかったです。超能力バトルの駆け引きとしても、心理描写としても超一流でした。お腹いっぱい。


 前半はこうやって熱いバトルがありぃの、後半はマリア・ロス事件の真相とエドの決意まで。
 10巻が出た際に9巻から読み直してみたんですが、マリア・ロス生存へと繋がる決定的な伏線はリンとバリーの「そっちじゃなくて、東の・・・」「あー、そっちか」だったんですね。匂わせるものはそこら中にあったんですが、キーとなっていたのはこのシーンと爺さんが出ていなかったこと。
 この作者、動かせる登場人物をしっかりと把握していて、キャラ配置に無駄がありません。ロイ組の一人(ブレダ少尉)が出てないなーとは思ってましたが、ちゃんとエドの案内役という重要な役目があった訳ですか。よくもまぁ、これだけの人数を混乱せずに動かせるなぁと思います。

 さて―――ということで明かされたマリア・ロス少尉の生存。伏線張りまくりぃの偽装殺人ってトコは『るろ剣』と大差ないはずなのに、こちらの場合は嫌悪感がなかったです。それはきっとロイ大佐にロス少尉を殺す理由がなかったのと、縁に薫を殺さない(ちゃんとした)理由がなかったという違いなのかなぁと思います。
 それと―――謎だった部分(歯の治療痕、ちぎれていた腕のネームプレート、予定外だの台詞)がちゃんと伏線だったこと、ロス少尉の生存がエドの決意(ヒューズの死を乗り越える)へと繋がっていたことで、むしろムダのない構成という印象すら覚えました。ミーハーな部分が叩かれることの多い作品ですが、テクニック的なものは無茶苦茶高いと思いますよ。


 バリーの消滅、ラストの死亡、ハボックの戦線離脱と・・・・物語が収束に向かうのかと思いきや、七人目のホムンクルス・プライドの登場、、エルリック兄弟の父親が登場、ホムンクルスの親父殿が動き出し
(僕はプライド=親父殿なのかと思っていたんですが、口調が違いますね。むしろ、エルリック兄弟の父親と親父殿のルックスが同じだ・・・・)、クセルクセス遺跡にある練成陣、西の賢者、ウィンリィの両親をころしたイシュヴァール人・・・・と伏線がたっぷり。
 スカーとか暫く見ていないし、8巻に出てきたメイ・チャンという錬丹術師も出てきていない・・・風呂敷を全部畳み終わるまでには、まだ当分かかりそうですねぇ・・・・・・次は7月ですかー。じれるなあ。


 
3月22日追記:Web拍手にて「錬丹術師のメイ・チャンは10巻に登場しています。」という情報を頂きました。んなバカなと思いつつコミックスを探してみると・・・・・ホントだ!!101ページでエドとニアミスしてる!!
 これが何かの伏線になるかは知りませんが、メイ・チャンはエドのことを「長身で爽やかな人」と思っているので気付かなかったということなんでしょうね(笑) 芸が細かい・・・っつーか、気付くかこんなもの!













鋼の錬金術師 9巻  Amazonで購入
荒川弘
スクウェア・エニックス
ガンガンコミックス
2004年11月22日・発売
超能力バトル・ファンタジー
 一過性のブームで終わらせてしまうには勿体ない、地味な盛り上がり方だと思った。
 表紙はリザ・ホークアイ率いる(笑)ロイ組の6人で、背表紙はリザ。内容の方も、ロイ配下のリザ、ファルマン、ハボックを中心に展開。初登場の頃はまさかファルマンやハボックがこんなに重要キャラになるとは思わなかった。彼ら以外にも、無数に配置した“何のために出したのかよう分からんキャラ”が有機的に動いて、ドラマを盛り上げてくる。このキャラ回しは素直に凄い。
 4巻で起きたヒューズ暗殺事件を受けて、各勢力が必死に真実にたどり着こうとしているんだけど、「Aというキャラが○○のことを知っているが××は知らない」「Bというキャラは××のことを△△だと誤解していて、○○のことは知らない」のように、各勢力の情報具合が違う。こういう情報戦のやり取りは、じっくりと伏線を張れる月刊誌ならではの面白さだなぁと思った。以下、具体例。

・エルリック兄弟・・・ヒューズの暗殺自体を知らず、新聞で犯人はロス少尉だと知る。が、第五研究所でロス少尉に助けられた件で、彼女が犯人だとは思わない。よって、彼女を殺した(と思っている)ロイに対して反発。バリーは敵、リンは厄介な味方だと認識している。ウロボロス組とは何度か接触、衝突。
・ロイ組・・・バリーと接触。彼から第五研究所の情報を得て、ヒューズ暗殺の真相へと向かう。真犯人は軍上層部だと睨んでいるので、ロス少尉を犯人だとは・・・・・・? エルリック兄弟、アームストロングともに信頼しているが、必要以上に情報を与えないのは別の道で犯人を追って欲しいからか? そして、バリーを餌にウロボロス組を釣るのに成功。した割に、なんで焦ってるんだ。
・アームストロング・・・無駄にエルリック兄弟の仲間。部下であるロス少尉への信頼だけでなく、第五研究所の一件で上層部がロス少尉を犯人に仕立て上げようとしているところまで嗅ぎつける。が、すれ違いでロイがロス少尉を殺してしまった(と思っている)ので反発・・・・・なんだけど、ロイの言葉を受けてエドと東部に向かう。つまり・・・・
・ウロボロス組・・・真犯人。国家錬金術師を「人柱」だとして、監視している。軍を自在に動かせる立場を利用して、ロイ組をセントラルに。だが、怒涛の勢いで真実に近づく彼らを警戒。ロイ組の信頼関係の厚さを逆手に取り、ハボックから情報を引き出そうとラストが色仕掛け(笑) 元飼い猫だったバリーから情報が漏れるのを心配して、ロイ組に宣戦布告。
・バリー・・・第五研究所崩壊に紛れて逃走。ウロボロス組の存在は知っているけど、賢者の石の情報はない。アル、ロス少尉と交戦したこともある。ので、ロス少尉がヒューズ暗殺の濡れ衣を着せられているのだと判断、ロイに「良い話」を持ちかける。ということは・・・・ あと、何だかリンの国に興味があるみたい。
・リン組・・・目的は「不老不死」、そのためにアルやバリーに協力をするんだけど・・・・単なる良い人だという気もする。ヒューズ暗殺に関しては他人事。なのだが、バリーに協力しているためにウロボロス組と接触。ジジイが何気なくエンヴィーにたどり着いたのにはビックリ。実は最強キャラ?
※ 12月18日追記:エンヴィーまでたどり着いたのはジジイじゃなくてランファン(女のコ)の方でした。情報ありがとうございます!何でジジイだと勘違いしたのだろう・・・・・・・・・ジジイならエンヴィー相手に善戦するかもって思ってたんですが、ランファンじゃやばそう。エド(主人公)に苦戦していたくらいだし。

 主人公サイドも敵サイドも含めて、何がどう起こっているのかを全部知っている勢力はないんだよね。こういう情報戦は“読者だけが神の視点で全部分かっている”という楽しさがある。ロス少尉の一件は、ウロボロス組とロイ組の情報戦で、ここで初めてロイ組が優位に立ったということだと思うんだけど―――ここまで確信していながら、あれらの伏線が全部ミスリードで、普通に彼女が死んでいたら・・・・・もう漫画読みとして引退しますわ。

 と、この巻でのハイライトであるロイ組vsウロボロス組の対決では心理描写をカットして、ストイックな情報戦となっているため、逆に主人公サイドは心理描写がメイン。自分たちのために周囲が犠牲になっていくことに対して悩んでいる彼らを描きつつ、そうした事態を東部の内乱で既に乗り越えざるを得なかったロイ組との対比にもなっているのか・・・・・・・・1ページだけのロイとリザが接触する内乱の絵は・・・・過去編でリザが語った「守るべき人のために」という伏線は、まだまだ一捻りあるのだと思わせてくれる。東部内乱の話だけでも、またコミックス1冊分くらいは描けるよなぁ。



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