CUE 3巻 CUE 2巻 CUE 1巻



CUE 3巻 Amazonで購入
村上かつら
小学館・スピリッツコミックス
2005年2月28日・発売
演劇・青春・自分探し
 とうとう完結。最終巻ということで、やはり巻末に作者の「あとがき」があるんですが―――「挑戦したことを後悔はしていません」の辺りに打ち切り臭さを感じてしまいました。結果的に物凄く高密度な展開となった終盤で、これを雑誌で読んでいた頃は毎週涙したものですが・・・・・・もし、作者が描きたいだけ描けていたならどうだったのだろうと思う気持ちもあったり。

 まぁ、そうは言いつつも3巻のクオリティは凄まじいです。1巻から張り巡らされた伏線が繋がり、竹田が伊藤のことを想って立ち上がり、了三が「過去」を乗り越えようと自分の部屋を出て、「Cue」の本当の意味―信じること―が繰り返し語られ・・・・・・・欲を言えば、半井の放置されっ放しを何とかして欲しかったですが、コミックスで読み返すと「二人で雪の紙吹雪を作るシーン」がそれなりのイベントだったのかなぁ・・・・・(でも、やっぱり半井が竹田の演劇を観るってシーンは欲しかった)

 好きなシーンを挙げるとキリがないんですけど、了三がクラスメイトのアンケートを読むシーン、夏有とエミちゃんが「信じきること」について話すシーン、了三が夢の中で向と再会するシーンの3つは格別。これを描くために1巻からの長い溜めがあったのだと思います。1〜2巻で読むのを辞めたって人がいたら勿体ない。是非3巻を。

 
向「だだっ広い海のまん中に、放り出されたような感覚。自分は無力で、客席の誰からも受け入れてもらえないような気がして、」
 
了三「役者も・・・・・・おんなじなのか・・・・・?」
 
向「ああ。迷ったとき見る地獄は皆同じさ。―――だけど、間違ってると思ったままじゃ、どれだけ泳いだってたどり着けないよ。しがみついてるその板切れから手をはなして、自分を信じて、」
 
了三「あ・・・・・・・・でも」
 
向「大丈夫、「書きたい」っていう気持ちだけになるんだ。―――思い出して、子供の頃はもっと楽しかったはずだろう?」

 このシーン、昨年末からずっと、苦しい時には必ず思い出すようにしています。「あぁ、こんなことを書いていいのか」「こんなもののどこが面白いんだろう」 文章を書いていると毎秒のように頭をよぎるのですが、全ての雑念を捨ててでも「書きたい」と思う気持ちは忘れないように。それが「Cue」なんだと思って頑張っております。

 あぁ・・・・・ホント、この漫画に出会えて良かった。

【純粋あげ工場】
 2003年度Qウェルが選んだベスト漫画。
 「木下さんと夏有ってルックス全く一緒じゃん!」「コンビニの店員って、こんなにチャラチャラしてたっけ・・・・」「1話目と4話目の冒頭部分って一緒だったんだ!」と若干記憶と違った部分はありましたが、第2話はマジ凄ぇって!震えまくり。

 
「孤独を感じるのは。愛されたいと思う時だ。
 「愛されたい」なんてそんなこと 思いつきさえしなければ、いつもと同じ、平和で過不足ない毎日。」


 周りが自分の知らないペースで恋愛をしていて、自分だけが恋することも知らずに取り残されてしまったような感覚―――こういう気持ちを、自分以外にも持っている人がいるんだって嬉しくなった(寂しくなくなった?)もんでした。こういう気持ちを描けるからこそ、僕はいつまでも村上かつらファンを辞められないんだなぁと思います。
 是非、万人に読んでもらいたい作品なんですが、よりよって他の漫画の3冊目に入るという悪条件な収録で―――コミックスに入ったのは嬉しかったですけど、いろいろとフクザツです。












CUE 2巻 Amazonで購入
村上かつら
小学館・スピリッツコミックス
2005年1月28日・発売
演劇・青春・自分探し
 待望の2巻発売。この機会に1巻の感想を読み返してみたのだけど、最終回まで読んだ後だと「ピント外れたこと言ってるなぁ」という感じです。特に伊藤さんのセリフについての考察。伊藤さんのバックボーンを知っていると、あのシーンは無茶苦茶深いんだなぁと思い直しました。

 さて、2巻。向が「cue」を取り戻すまでの過程と、竹田が演劇に入っていくまでの過程を収録。
 1巻の入部篇は何の意味があるのかと思ってたのだけど、2巻を読んで分かりました。「向が純粋に演劇を好きだった頃」を象徴するのが、何かに夢中になれた中学生くらいの竹田や伊藤さんだったということですね。竹田にとってはハンドボール、伊藤さんにとっては演劇だった訳ですが。
 ということで、大人パート(向、了三、夏有)と中学生パート(竹田、伊藤さん、半井)を対比させながら話が進むのかなーと思いきや、大人パートの3人が互いに心配したり支えあったりしてるのに対して、中学生パートの3人は・・・・・「キスくらいさせろ!」とか(笑) 半井だけ登場する漫画が『サユリ1号』みたいで非常に違和感あります。

 まぁ、そんなこんなで「もうちょっと対比を徹底した方が良かったんじゃないかな」と思っちゃったりもしたのですが、この2つのパートが交わる公演初日の描写は凄まじいです。

 「今まさに演劇を失おうとしてる」向は、舞台の最中に雑念を見る。
 “普通の人は大人になるまでに色んなものを手放してきた。だから、ずっと芝居に守られてきたあなたより強い。「どうしてもこれじゃなきゃいけない」ものなんか作ってはいけない。だから、あなたも芝居を捨てて―――”
 これ、ビジュアル的には了三と夏有に言わせてるのだけど、向自身が作り上げた「逃げ道」なんだと思います。向にとって了三と夏有は「楽しかった小学生時代の象徴」なので、二人だけは芝居を捨てた自分も受け入れてくれるであろうと。向にとっての「願望」ですね。
 
※ 1巻で「cue」が入るということは信じることなんだというセリフがあったけど、このシーンでの向は役者としての自分を信じきれてない訳です。

 ただ、この向の作った「逃げ道」を竹田が否定するんです。
 
「「どうしてもこれじゃなきゃいけない」ものだけが味あわせてくれるんだ。ものすごくでかい喜びと、体をもがれるほどの・・・・・・・・かなしみを」
 「ハンドボールを失った」竹田だからこそ、向に「演劇」を捨てて欲しくなかった。その想いが、竹田に向の雑念を感じさせ、向に竹田の痛みが伝わったんだと思います。「好きだからこそ怖かったんだ」と。そして、向は舞台へ―――


 これ、初めて雑誌で読んだ時は「??」状態だったのですよ。ニュータイプなのか、この漫画はファンタジーなのかと。でも、「信じきることができた者だけが見れる奇跡」というのは確かに存在する訳で、今回コミックスで読んだ時はボロボロ泣いてしまった。


 そして、物語は再び竹田と伊藤さんの話へ―――彼女にとって演劇は「どうしてもこれじゃなきゃいけないもの」だったはず。それを“償い”として捨てようという。もう、二度と彼女は演劇が出来ないのか―――向の事故死、シアター夢の閉館と、ストーリーは激動して次巻へ。


 自分の雑誌感想を読み返すと、2巻の部分は全然食いついてなかったんですが―――コミックスで読んでみると、ここら辺も相当面白かったです。向が「cue」を取り戻すまでが、『CUE』の第1部って感じだったんですね。ここで終わってても十分に良作だったのでしょうが、激動の第2部が始まる訳です。次が多分最終巻ですね。楽しみ。












CUE 1巻 Amazonで購入
村上かつら
小学館・スピリッツコミックス
2004年9月30日・発売
演劇・青春・自分探し
 表紙はグラウンドで横たわるハンドボールのゴールの写真。背表紙の装飾といい、漫画というよりはハードカバーの小説みたいなデザインだ。村上かつらは絵だけで魅了する漫画家さんではないので、これは大正解。この漫画のターゲットは、この写真から「過ぎ去りし日」を感じられる世代を対象としているわけなのだから。
 週刊で読んでいる頃にはそれほど思わなかったけど、竹田の演劇部仮入部篇は物凄くテンポ良く進んでいたんだなぁ。早く向や了三を登場させたくて、早足になっていたとか? そのペース早い入部篇、読者に「cueが入ること」の意味を知らしめる役目があるにしても、それ以外はイマイチのまま終わっちゃった。ところどころで“らしい”台詞で魅せてくれはするけど、それが作品自体の質を上げるところまでは行っていないというか。

「・・・ほんとは毎年、文化祭のたびに思ってた。
クラス対抗のお芝居のほうが華があって盛り上がって、だけど演劇部の番が来ると、とたんに客席がしらけちゃうのがわかるの。私達の方が本職なのにね。
持って生まれた存在感には勝てない。
だけど、それを持たざる人間だって、スポットライトに憧れちゃったりはするわけよ。
・・・・・持たないからこそ・・・・・・・」


 これ、すげー良い台詞だと思うけど。リアルな中学生の心情描写とはどうしても思えないんだけどなぁ。こういうのを感じるのって、大人になってからの方が多くない? どうも、大人から見た中学生意見でしかないかなぁって思っちゃう。

 その反面、終盤に出てくる向・了三・夏有の3人の描写は凄まじい。特に、夏有視点で了三を語る「屋上の寝太郎」の回の出来はバケモノじみている。小学生の頃の時間を取り戻して、もう一度輝きたい向。小学生の頃から時間が止まったままの了三。社会の中で傷つき、離婚して家に戻っても「出戻り」と陰口を叩かれている夏有は、小学生の頃の時間を生きようとしている二人に涙する。

 うーん、ラスト2話の出来で何とか救われた。やはり、村上かつらは了三みたいなヤツを描いてナンボだと思うのだ。



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